サイエンスZEROでシロアリの驚きの生態を紹介!世界最多の24京&スーパー長寿の50年!

サイエンスZERO

こんにちは。

NHK Eテレで放送している『サイエンスZERO』。毎回毎回いま話題の最先端の科学と技術をとっても分かりやすく解説してくれるので、ワタクシの大好きな番組でもあります。今回は、2020年2月2日放送の「世界最多!スーパー長寿!ミラクル昆虫 驚きの生態」をご紹介します!日本科学未来館からの公開収録でたくさんの子供たちがワクワクしながら参加していましたね!

世界で最も数が多く、最も長生きな昆虫がテーマ。寿命はなんと50年以上。長寿の秘けつは特別な食事「ロイヤルフード」と一風変わった住環境にあった。社会性を持つ“究極の助け合い生物”で、一匹一匹の力は小さいが集まれば高度な知性に匹敵する「群知能」も発揮、複雑な迷路もやすやすと解く。そんなミラクル昆虫研究の第一人者が研究の最前線を語る。この昆虫を知ることは人間社会に対する理解を深めることにもつながるという




サイエンスZERO〜放送日と出演者

【放送日】2020年2月2日

【司 会】小島瑠璃子、森田洋平
【ゲスト】京都大学大学院農学研究科 教授…松浦健二
【語 り】大嶋貴志

【放 送】 毎週日曜 [Eテレ] 午後11時30分~0時
【再放送】 翌週土曜 [Eテレ] 午前11時~11時30分

身近な昆虫の寿命、分かるかな?

まずはウォーミングアップのクイズ。カブトムシ、アブラゼミ、モンシロチョウ、この中で最も長生きなのはどれ?答えはアブラゼミ。幼虫の期間が長いんですよね。それぞれの寿命は次のようになっていますが、正確には知りませんでした。

  • アブラゼミ:およそ7年。成虫の期間は数週間。土の中で幼虫として過ごす期間が長い
  • カブトムシ:およそ1年。
  • モンシロチョウ:1ヶ月〜2ヶ月。成虫の期間は10日間ほど。

このアブラゼミを凌駕する長寿昆虫が次に登場します!何かな〜


世界最多、スーパー長寿な昆虫は『シロアリ』!!!

シロアリについて詳しく解説してくれるのは、京都大学の松浦健二さん。シロアリは1億5000万年前に初めて地球上で社会生活を始めた生き物で、社会性においては人間よりも圧倒的な大先輩なんだと。

そして、そのシロアリ、地球上に24京匹生息していると推計されていて、その数はアリの24倍。世界最多の生息数なんだそう。おぞましい数ですよね。京って兆の1万倍らしいですけど、まったくイメージ湧かないです・・・

シロアリはみなさん知っているように、木が大好物ですよね。木材に含まれるセルロースという成分を栄養源にしていて、森の中で倒れた木を分解して土に還すという大切な役割も演じているんです。森の生態系を守る縁の下の力持ちだったんですね〜 とはいえ、家を土に還されちゃえらいことになるのでおうちはしっかり守りたいものですね。

50年以上の長寿を誇るのは、ヤマトシロアリ。日本に暮らしています。このヤマトシロアリの中でも王だけが50年以上の長寿なんだとか。王が50年以上。女王は25年以上。兵隊アリはおよそ10年。働きアリはおよそ5年。王が飛び抜けていますね。

シロアリの社会は王と女王の一夫一妻制で巣を作り、一つの巣の中のシロアリたちはすべてこの王と女王の子供たちで一家族なんです。しかも、王は1匹なのに、女王は単独で卵を産んで自分自身の遺伝子を100%コピーした分身を作ることができるっていう驚きの能力を持っているんですって!これによって、最初の女王が死んでしまってもまったく同じ遺伝子を持つ代わりがいるっていう状況を作っていて、ある意味”不死”なんです。多い時には分身が600匹にもなることもあるとか。反対に、王は自分で卵を産めないので、ひたすら同じ個体を長生きさせようとする進化が働き、その結果として50年以上の長寿となったそうな。ちょっと気の毒な気が・・・

長寿の秘訣は「低酸素」と「ロイヤルフード」にあり!

シロアリの巣には40万〜50万匹のシロアリが住んでいますが、その中に王はたった1匹。巣の中でももっとも奥の安全な場所にその居室が設けられています。たくさんのシロアリが密集する巣の中では、奥に行くほど酸素が薄くなることが分かっていて、王には酸素を使わずにエネルギーを生み出す代謝が備わっていて、体を傷つける活性酸素を出す量が抑えられることによって長寿に有利な状態になっているそうな。

さらに、王は食べ物もスペシャルで、働きアリが吐き戻すものを口移しでもらって食べている。これを「ロイヤルフード」と呼んでいるそうですが、人類の知らないものも成分に入っていて、シロアリの王が50年生きる秘密がこの中にあるそうです。ただいま絶賛特許申請中で、詳しいことは言えないんだって。研究が進んで、そのうち人間もその恩恵にあずかれるようになるかもしれませんね〜 若がえり!待ち遠しいですか?


サイエンスZERO〜放送内容文字起こし

はい!こんにちは〜!
ありがとうございます。

日本科学未来館からお届けして「サイエンスzero」。 今回のテーマはこちら。「発見!奇妙な生き物たちの生態」ということなんですけれども、今回扱うのはとってもとっても長生きで我々の長寿のヒントを与えてくれるかもしれないということで、世界中の研究者が今、大注目のある昆虫なんですね。
昆虫ですか。
では、ここで突然ですがみなさんにクイズです!次の三つのうち一番長生きなのはどの昆虫でしょうか?
1番カブトムシ、2番アブラゼミ、3番モンシロチョウ。
カブトムシだと思う人、手を挙げてください。あっ、結構手が上がりましたね。アブラゼミだと思う人はてあげてください。あらっ、かなり手が挙がりましたね。
えっ、多い。セミって長生きなんだ?えっ?
モンシロチョウだと思う人。
一番少ないかな?
そうかな?
私もモンシロチョウだと思います。
あれ?
じゃあ正解はどうなんでしょうか?正解はこちら!というわけで一番長生きなのはアブラゼミでした。かなり多くの方が大正解でした。
そうか。幼虫のままの期間が長いんですか?
そうなんです。

アブラゼミの寿命はおよそ7年と言われています。成虫の期間は数週間ほどですが、土の中で幼虫として過ごす時間がとても長いんです。
モンシロチョウの寿命は1ヶ月から2ヶ月。ヒラヒラと飛ぶ成虫の期間は10日間ほどといわれます。カブトムシの寿命はおよそ1年。成虫の期間は長いですが、実はセミよりも短命なのです。

ただですね、この7年なんてもんじゃない、もっともっと長生きの昆虫がいるんです。ヒントはこちらのシルエット。
あっ、分かる人?じゃあ一番前の女の子聞いてみましょうか。
ヒアリ?
ヒアリ!今ね、ニュースでたくさん聞くもんね。よく見てるね。すごい。
ニュースも見てるんだ。
他には?
シロアリ!
ピンポイントですね。
さあ正解はこちら!
うん!見事正解。シロアリなんですね。
すごい。
なんでわかったの?
思いつくままにただ言っただけ。
鋭いな〜。
それに従って生きていってね、これからも。素晴らしい感覚。
このシロアリ、小島さんどのくらい生きると思いますか?
どんなに長くてもやっぱり10年とか?10年も生きられたら困りますけれど。
正解はこちら!
えっ?
50年以上生きるというふうにいわれているんです。
勘弁してくれよ〜。だって家をかじっちゃいますもんね。
今日はその生態に迫っていきたいと思います。では、専門家をお呼びしましょう。シロアリ研究の第一人者、京都大学の松浦健二さんです。
よろしくお願いします!
もともと、松浦さん、どうしてシロアリに興味を持たれたんですか?
そうですね。シロアリっていうと、皆さんお持ちのイメージって、害虫としてのイメージだと思うんですけど、シロアリって1億5000万年前に初めて地球上で社会生活を始めた生き物で、我々より社会性の圧倒的な大先輩で。彼らの世界を通じて、寿命っていったい何なんだろうとか、生物ってどういうものなんだろう、人間ってなんなんだろうか、そういうところまでつながってくるのが社会性の生き物、シロアリの面白さでもあると思います。
シロアリから自分たちの世界のことを知れる。
そうなんですね。

では、そのシロアリですけれども、一体地球上にどれくらい生息しているというふうに思いますか?
1億?10億?
ここでヒントです。普通のアリは地球上に1京匹生息しています。京って分かりますかね?1兆の1万倍です。
1京・・・。えっ、じゃあ3京。
正解はこちら。24京匹です。ですから、普通のアリの20倍以上推計されているんですね。
アリっていうのはむしろハチに近い生き物で、シロアリっていうのはそれとは全く別の起源をして、全く別のシステムを持っている生き物なんですね。
そうなんですね。
これくらいの数生きている生物って、他に地球上にいるんですか?
これにかなう昆虫っていうのはいないですね。
というわけで、世界ではどんなところに暮らしているのかご覧下さい。

こちらはブラジルの草原。立ち並ぶ茶色いものはシロアリの巣、アリ塚です。
わ〜りっぱですね。
大きいものは2メートルを超えます。これらはすべて小さなシロアリたちが作り出しました。その様子を見てみましょう。土やシロアリ自身の排泄物を唾液と混ぜ、少しずつ積み上げていきます。ちなみに夜になるとこのアリ塚・・・。
えっ?何で?蛍みたい。
「地上の星空」と言われるほど光り輝きます。光っているのはシロアリでもなく、アリ塚にすみ着く別の虫(ヒカリコメツキムシの幼虫)。
場所を借りて生きているんですか?
そうですね。
幻想的な光景です。
きれいですね。
では日本のシロアリはどこに住んでいるのか。見て下さい。木の幹に着いたこぶのようなもの。実はこれがシロアリの巣です(タカサゴシロアリの巣)。巨大な塊は木の食べかすを固めたものです。中を見ると・・・。いました、シロアリたち!この他、地下に巣を作るシロアリもいます。寒い冬は特に地中に潜ることが多いといいます。シロアリは木が大好物。木材に含まれるセルロースという成分を栄養源にしています。地球上に木はたくさんありますから、食べ物には困りません。だから、24京匹ものシロアリがいるんですね。森の住人であるシロアリは、倒れた木などを分解して土にかえすという重要な役割を果たしています。つまり森の生態系を守る縁の下の力持ち。シロアリがいるからこそ、豊かな森が育つといえるのです。
では、シロアリの長寿の秘密を見ていきましょう。50年以上生きるのは日本に暮らすヤマトシロアリ。しかし全てのヤマトシロアリが50年生きるわけではありません。シロアリには役割分担があります。卵を産み、子どもを増やす王と女王。外敵と戦い、巣を守る兵隊アリ。そして巣作りや食料の調達、卵の世話をする働きアリ。
私卵の世話って役がいいな。
この中で50年以上生きるのはどれだと、小島さん思いますか?
女王じゃないですか?

正解は・・・
王なんです。王が50年以上。女王は25年以上。兵隊アリ(およそ10年)や働きアリ(およそ5年)もかなり長生きですが、王は飛び抜けています。

昆虫の平均寿命って2ヶ月ぐらいなんです。50年で300倍ですよね。
尋常じゃないですね。
そうすると例えて言うなら、9000年生きる猿がいるに近い。
そういうことか。
女王バチとか女王アリっていうのは、小島さん、聞いたことあると思うんですけど、「王」って?
確かに「王アリ」って聞いたことないですね。王アリは1匹なんですか?
そうですね。シロアリの社会っていうのはオスとメスの一夫一妻で巣を作ります。我々よりもっと男女共同参画なぐらい、オスとメス両方で構成される社会なんですね。
人間と似てますね、そう考えると。
その点ではね。王と女王が、いわゆるお父さんとお母さんの役割で子供を産みます。全部、一つの巣の中の働きアリ、兵隊アリもこのお父さん母さんの子供達、一家族なんですよね。
そういうことですね。
みんな血のつながりが確実にある?
そういうことです。
多いものでは40万匹とか、さらに50万匹、種によっては100万匹を超えるような大きな巣を作るものもありますね。
更にですね、驚くことがありまして、この女王、お母さんはある意味死なないんです。
えっ?
実は、シロアリの女王は分身の術を使える。
へえ〜。

通常は王と女王の共同作業で子供が生まれますが、女王は単独で卵を産むこともできます。その卵は、全て王の遺伝子が入っていない、いわば自分の分身。そして女王が死んでしまった時、分身が女王となり、代替わりしながらずっと生き続けることになるんです。
まるっと100%、自分の遺伝子だけで子供も作れる?
そうなんです。遺伝的には巨大で死なない最初の女王が居続けるのと同じことなんですね。
すごい!
例えば、自分の子供が女王に上がってしまったらですね、王は自分の遺伝子を持ってるものと子供を作ることになるんで、巣としてはどんどん遺伝的に劣化していく。だけどこの場合ですね、自分は死んでも自分の分身が巣を継いでいく。こんなに見事な仕組みってないんですよね。私もこれは発見した時には非常に驚きました。
えっ、先生が発見したんですか?
そうですね。
こんなSFみたいなことが実際に起きてるっていうのは本当に驚きました。
ちなみにこの分身ってどのくらいいるんですか?
分身はですね、多い場合には600匹を超える。1匹の王が奥さん600人以上っていう状態です。
生物として強すぎる。
王が死んだら次の王を、自分だけで作ることはできませんよね。王は卵を産めないので。王をとにかく長生きさせようっていう進化が働くんですね。
へえ〜。



では、なぜ王や女王は長生きできるのでしょうか?
「王のVIPルーム」。
これが長生きさせる秘訣ですか。

驚異的な長寿をもたらす王のVIPルームの秘密とは?松浦さんの調査に同行しました。
山を登ること30分。

じゃあこの辺でやりましょうか。

松浦さんが目をつけたのは立ち枯れた木の根元。
掘る手に力が入ります。

とその時、お〜いるいる。しかしここからが勝負。王のVIPルームがこの木にあるのか、地下でつながった別の木にあるのかまだ分かりません。あるとすれば地面より下の最も奥深い場所。チェーンソーの出番です。

スローダウン、スローダウン。

木の根元を割る松浦さん。

きた。幼虫ざんまいやな。

そこには兵隊アリの姿も。頭が大きく、強力な顎を持っています。

兵隊アリがだいぶ怒っているんで、大事なものが近くにある感じになってきている。こう、牙むいて怒ってくるんで。兵隊が怒ってきてますね。こうやって元気に怒ってくる兵隊は中心に近い兵隊なんですよ。

いよいよ王の部屋に近づいているのでしょうか?

かたいところに中枢ってある。敵が来づらい一番かたいところに。

捜索開始から2時間半。

あかん。先が使えん。俺のやつ使ってくれ。俺のやつ。それ。俺のやつ。俺のかばんの中。
きた!きた!きた!吸虫管、吸虫管。女王いました!ここに。出てきた出てきた。これ女王です!

こちらシロアリの女王。おなかがぷっくりと膨らんでいます。

よかった、出てきて。このあと、またキングがね出てくるんですよ。ここから。

さあ、いよいよ最も深い部分へ。

きた!キングきた!



最深部から現れたシロアリのキング!たった1匹の王を見事探り当てました。地中深く、最も奥まった位置にある王のVIPルーム。この部屋が持つ特徴が王に長寿をもたらします。それは低酸素であること。たくさんのシロアリが密集する巣の中では、奥に行くほど酸素が薄くなっています。

低酸素状態の方がいいんですか?
そうですね。低酸素のところではですね酸素を使わない代謝も回すことができて、酸素を使わずにエネルギーを生み出すような代謝も持っていて。その代謝の方が活性酸素っていう、体を傷つける、細胞を傷つけるような物質が出にくい、そういう代謝になっていて、シロアリもですね低酸素の環境に適応することによって、それが結果的にですね、長寿にとっては有利な環境を提供してるということが分かってきています。
ちょっと安直かもしれんですけど、もし人間が低酸素状態で、活性酸素を出す量を抑えながら生きたとしたら、これ寿命伸びますか?
基本的には呼吸をおさえ食べ物なるべく食べず活動を抑えやるとですね、寿命が伸びるんです。
全然幸せじゃないですよね。
そうですね。全然幸せじゃないですよね。だから、呼吸を活発にしてエネルギーを生み出して、アクティブに振る舞うということと、それから寿命というのは、あちら立てればこちら立たずなんです。普通は。
へえ〜
でも思い出していただくと、シロアリって最も生殖が活発な個体が一番長生きなんです。
そうだ。どうしてだ?
鍵を握るかもしれないのが、「秘密の超パワーフード」。
これは王と女王だけが食べるんですか?
そうですね。王は木を食べられないんですね。
えっ?
王はですね、働きアリからある特別な餌をもらわないと生きていけないです。
そのスペシャルフードは何ですか?
実は松屋さんが世界で初めて撮影に成功した映像があります。ご覧ください。

そのスクープ映像がこちら!上の白いアリが働きアリ。下に王がいます。今働きアリが王に近づき、口移しで何かを渡しています。口から出てきた白いもの、分かりますか?これが王のための特別な食事なんです。

この映像すごい。あれは働きアリの体の中で作られたものですか?
そうですね。シロアリの働きアリが物質を作る。唾液腺という場所があるんですけど、そこで生産されて吐き戻して作られている。
このフードは何でしたか?
ロイヤルフードって呼んでるんですけれども。
ロイヤルフード

ロイヤルフードの秘密を探るため、松浦さんは現在、浜松医科大学と共同研究しています。
よろしくお願いします。(浜松医科大学 解剖学教授 瀬藤光利さん)



長寿をもたらすどんな成分が入っているのか?ごく微量な物質も検出できる特殊な装置を使い分析を進めています。するとシロアリのロイヤルフードの正体が少しずつ分かってきたといいます。

人類が知ってるものもあるし、まだ知らない初のものも入っている。いろんなものが入ってます。
私たち人間が口にしたことがある成分も入っている?
そうなんですよ。実はなんか、美容とか強壮に効くって言われてるようなやつも実は・・・
どんな成分が入ってたんですか?
内緒!
実はですね、特許の関係でいろんな大人の事情があって、今オープンにするわけにいかないんですよね。
よく聞く。「特許申請中」。
今オープンにするとですね、
取られちゃうんだ。
ミツバチのロイヤルゼリーってありますよね。あれミツバチ、女王生きてせいぜい5年とか6年とかですけども、50年生きる秘密がこの物質の中にはあるので。
すごい。クレオパトラ、楊貴妃が探し求めたものがここにあるかもしんないですよね。
虫を50年生きるさせるものが人をもっと生きさせるかというところはありますけれども。
早めにお願いします。
さあ、今ご覧いただいたように、王や女王はその他のシロアリから食べ物をもらって生きていましたけれども、他のシロアリたちも仲間がいないと食べ物にありつけない、生きていけないですね。
えっ?
シロアリ、実は木を自分で消化できないんです。
聞いた話と違います。
「シロアリは究極の助け合い生物」。どういうことなのか、こちらご覧いただきましょう。
木の成分セルロースは簡単には分解できません。そこでシロアリは体の中に微生物を飼い、分解してもらっているんです。微生物がいるのは腸の一番後ろです。しかし栄養を吸収する部分は腸の真ん中部分なので、分解したものを自分で吸収することができないんです。
うそでしょ。
そこでシロアリは仲間のお尻から出てきたものをもらって、真ん中の腸で吸収し栄養にしていると。
自分で分解したものを自分で吸収できないんですね。何とも不器用ではあるけれど、ただ、味方同士のつながりは深いですね。
そうですね。元々おそらくこの原生動物なりバクテリアなりが巣くった時っていうのは、寄生的な関係でその腸に寄生してたんでしょうけれども、まあそれが段々とそのシロアリにとっても利益になるような物質を生産するようになり、その方が寄生する生き物にとってもより繁栄できるとういう。だけど最初にできた系が一番お尻の先端なので、仲間が常にいるということで、あれを前にしなきゃダメな状況がなかったので、おそらくあのままでずっと。
へえ〜。
さあでは続いての助け合いの姿、キーワードはこちら。「集まればできる!」。
うん?
シロアリがどれだけ頭がいいかっていう事を皆さんにお見せしますね。
これはシロアリ用の迷路。ゴールにはシロアリの大好物があります。さあ、シロアリたちがこの迷路をどうやって解くかご覧ください。
最初間違った方向も含めて全方向にですね、出て生きますね。まだ誰も答え知らないので。
行き止まりの所も。
そうですね。最後、今行きましたね。今ゴールに一部行くと、もうルートが見えてきません?一瞬でもう正解のルートだけに集まってきてますよね。
間違えた方に行ってないですね、全然。
これは仲間に伝達できてる?
そうなんです。こういうのを群知能っていうんですけれども。最初の個体がですね、ここにたどり着いた瞬間に、じゃあ、その個体はどれぐらい戻って仲間に知らせに行ってるかっていうのを追いかけてみると、実はここにたどり着いたやつはここから戻ってですね。ここに行くとまたここから戻るんです。この間をずっと往復しながら走り回るんです。だから向こうまで行かないんです。
なるほど。じゃ、ここ担当の子がいると。
そうなんです。
で、ここでそれを取れたよっていうのをキャッチした個体がいる。
ここで「あったぞ」って走ってくるやつがいたら、「あったぞ」って言ってる方向にまず走るんですね。で、またさっき行ったところまで戻って走る。そうすると走る道ができるんです。でも、なかった方からは「なかった・・・」っていうことなんで、なかった方に走る個体はでないんです。
じゃあ、がっくし感は伝わってるんですね。
がっくし感。普通に歩いてる個体は別にそっちには行かないんですね。
なるほど、しょげている仲間を見たらそっちには行かないっていうことになってるんだ。これ見るとほんとにシロアリは仲間同士助け合っている。あるいは社会を築いているっていうことがよく分かりますね。
そうですね。ちょっと哲学的になりますけど、シロアリやアリの社会で、「そうであること」っていうのは必ず「そうであるべきこと」なんです。
感情で「こうしたい」とか「こうしたいから良くないことだけどこうする」とかいうものが一切ないっていうことですか?



悩みがないですね。働きアリとして生まれてきて働いているということを問うってことはないわけです。でも我々の世界って、例えば生物として生物的欲求として「そうである」ということと「そうであるべきこと」ってその間には大きな乖離がありますよね。
え〜全て違くないですか?
あるものって何かっていうと、我々が考えるってことですよね。理性であり、それを「自由」って呼びますね。我々が持ったその情報の伝播のルートって、決して遺伝子のアルゴリズムだけで説明できるものではなくて、遺伝子ではない方の情報の伝達ルートを持ってしまった、言葉を持った。ここで「分かった!」っていう興奮はこうやって伝わっていきますし、そこからまたメディアを通して、例えば論文を通して、空間も超えますし、時間も超えて、情報の伝達が可能になりますね。それが、そちらの方が、我々の実は人間の社会の大きなパワーを生み出している。
何か生物だったり、自然のものとかを研究する時に、「自分たちの社会がどんなものなのか。人間という生物がどういうものなのかっていうことが見えてくるんだ」って。その動物の研究ってそういう部分ももあるんだなっていうふうに思いました。
そうですね。私は科学っていうのは半分以上は哲学だと思っていて、学問の間に境界っていうのはかくって、生き物を知るってことはすなわち我々人間って何なのかを知ることと常に一体だと思っています。
では、質問がある方手を挙げてください。
普通のアリは黒なのに、何でシロアリは白いんですか?
シロアリって基本的にですね、木の中にすんでいたり土の中にすんでたりしますよね。で、黒いアリってを地面の上を歩きますよね。我々もそうですけど、お日様に当たるとですね、紫外線って当たりますよね。紫外線ってそのまま入っちゃうと体にとってものすごく細胞を殺しちゃう。ダメージを与えるんですね。だから黒く防備してるんですね。(メラニンで体を守っている)
そういうことだったんですね。

松浦さん、今日はほんとに貴重なお話ありがとうございました。



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