こんにちは。
NHK Eテレで放送している『サイエンスZERO』。毎回毎回いま話題の最先端の科学と技術をとっても分かりやすく解説してくれるので、ワタクシの大好きな番組でもあります。今回は、2020年2月9日放送の「地球外生命発見前夜 科学者が挑む“宇宙人探し”」をご紹介します!地上・宇宙の望遠鏡からの新発見、新しいアストロバイオロジーという学問の進展により、近い将来、地球外生命が見つかるかもしれないようです。早速みていきましょう。
“宇宙人”は、もはやSFの世界ではない!いま世界中の科学者が本気で地球外生命を探し始めている。観測技術の進歩で太陽系の外で見つかる「系外惑星」の数が爆発的に増え、科学者たちの興味は「地球外生命はいるか?いないか?」から「どうやって見つけるか?」に大きくシフトした。既に「アストロバイオロジー(宇宙生物学)」という研究分野が確立し、日本にも研究拠点が設置されている。地球外生命探査の最前線を伝える。
サイエンスZERO〜放送日と出演者
【放送日】2020年2月9日
【司 会】小島瑠璃子、森田洋平
【ゲスト】国立天文台准教授…縣秀彦
【語 り】川野剛稔
【放 送】 毎週日曜 [Eテレ] 午後11時30分~0時
【再放送】 翌週土曜 [Eテレ] 午前11時~11時30分
続々と発見される系外惑星!!系外惑星・トランジット法・赤色矮星についてサイエンスゼロで解説🎶
私たちのいる太陽系の外にある惑星を『系外惑星』と呼ぶそうですが、その系外惑星発見の功績で、マイヨール博士とケロー博士は2019年にノーベル物理学賞を受賞しました。
系外惑星発見に大活躍したのが、2009年に宇宙に打ち上げられたNASAの「ケプラー望遠鏡」。2009年からの9年間で2,600個以上の系外惑星を捉えました。そして、その系外惑星発見のための重要な観測方法が「トランジット法」というものでした。
地球が太陽の周りを周るように、系外惑星も恒星の周りを回っています。惑星が恒星の前を横切るときの明るさの変化を測定するのがトランジット法。マサチューセッツ工科大学のサラ・シーガー教授によると、太陽のような明るい恒星よりも質量が小さくて暗い恒星(=赤色矮星:せきしょくわいせい)の方が惑星を見つけやすいことが分かったそうです。赤色矮星は恒星全体の3/4を占めているとのこと。
そして、2017年、地球から40光年のところ、水瓶座の方向にある赤色矮星(トラピスト1)の周りで、地球サイズの惑星が7個発見され、そのうちの3つには液体の水の存在の可能性があるようです。
さらに、2018年には系外惑星探査専用の宇宙望遠鏡TESSが打ち上げられ、2020年1月までの1年半で1,600個以上の系外惑星”候補”を発見しているようです。
ものすごい勢いで惑星が発見され、地球外生命発見が現実のものとして近づいてきた感じがしますよね!
地球外生命がいるのは『ハビタブルでトワイライト』なところ。それってどんなところなの?サイエンスゼロで解りやすく解説🎶
系外惑星が次々に見つかっているようですが、生命がいそうな惑星はどのくらいあるんでしょうか?
生命存在の可能性があるのは、惑星が恒星系の「ハビタブルゾーン」にあり、惑星の中の「トワイライトゾーン」と呼ばれるエリア だと考えられているようです。一体どういう環境のことを言うんでしょう???
生命がいる条件が整っていると考えられる惑星は20個程度。結構少ないんですね〜。ちょっと驚きました。
生命存在の条件 その1 惑星がハビタブルゾーンにあること
恒星からの距離がちょうど良く、惑星表面に液体の水が存在できる領域(=ハビタブルゾーン)に惑星があること。
何千個も系外惑星が見つかってはいるものの、この条件を満たす惑星は案外少ないようですね。
生命存在の条件 その2 水が豊富にあって温度ほどほどのトワイライトゾーンが候補地
温度が低い赤色矮星の周りでは、より恒星に近い位置にある「ハビタブルゾーン」。その結果として、恒星の強い重力によって「潮汐ロック(ちょうせきろっく)」という現象が起こるそうです。
常に同じ面を向けて地球の周りを回る月のように、惑星が恒星に対して常に同じ面を向けて回ることを「潮汐ロック」と呼び、恒星側の面はずっと昼で反対側はずっと夜。その結果、昼の側はメチャ熱く、夜の側はメチャ寒い。惑星表面の水は、温度の高い昼の側で熱せられて水蒸気となり、温度の低い夜の側に移動するという大気の流れが常に生まれ、昼と夜の境になる帯状のエリアが生命存在の期待が高まっている「トワイライトゾーン」と呼ばれているそう。気象シミュレーションで、潮汐ロックされた惑星であっても生命にちょうどいい場所があることが分かってきたということです。期待が高まりますね〜
いろんな分野の研究者が参加!「アストロバイオロジー(宇宙生物学)」研究の進展🎶
宇宙探査というと、これまでは天文学が中心だったようですが、1995年(初の系外惑星発見の年)以降、天文、生物だけでなく、化学、地球惑星科学、大気、天気、火山、地質、海洋などの広範な分野の研究者たちが共同して地球外生命の探査・研究が進められるようになってきて、日本においても東京都三鷹市の国立天文台の中にアストロバイオロジーセンター が設置されており、各分野の研究者が地球外生命発見に向けて研究を進めているとのこと。
合言葉は”レッドエッジを探せ!”
地球の植物は光合成をします。ここまでは知っていますよね?で、植物の光合成では光の成分のうちの可視光の部分を吸収。赤外線は使わないためほとんどを反射するそうな。その結果、光のスペクトルを分析すると、可視光と赤外線の間に大きな差がある状態が観測でき、この状態をレッドエッジと呼ぶんだそうな。
系外惑星の光を調べて、レッドエッジが確認できれば、地球と同じように可視光を使って光合成をする生物が存在する証拠となるよ。ということ。
レッドエッジ観測のための武器 口径30メートルクラスの超大型望遠鏡
レッドエッジ観測のために、日本、ヨーロッパ、アメリカで次々と超大型望遠鏡が建設されているようです。2020年代に稼働開始するらしいので、もうまもなくなんですね〜
4光年先のプロキシマbへ探査機を直接送り込む!『ブレイクスルー・スターショット計画』をサイエンスゼロで解説🎶
2016年、ホーキング博士が語った「ブレイクスルー・スターショット計画」。5センチ角のちっちゃい探査機を1,000個ほどを、地球から4光年先の系外惑星「プロキシマb」に送り込む。という計画。このちっちゃい探査機、真ん中に高感度カメラや通信機器やコンピュータを積んで、その周りはヨットの帆のようになっている。地球からのレーザー光を帆に当てることで光速の1/5まで加速させてプロキシマbを目指すようです。開発にこれから20年、宇宙を飛んでいくのに20年、返事が返ってくるのに4年の合計44年の計画。若いみなさんは宇宙からの返事を聞けるかもしれないですね!
サイエンスZERO〜放送内容全文
宇宙のはるかかなた、生命が息づく惑星がある。赤い空の下、生い茂る植物 。そこで生存競争を繰り広げる動物たち。 実はこれ、科学者たちが大真面目に考えた地球外生命の姿なんです。
今、太陽系の外で惑星が次々と発見され、中には地球とよく似た星があることも分かってきました。 天文学者のみならず、様々な分野の科学者が集結し、宇宙での生命探査が一気に加速しています!さあ、科学者たちが本気で挑む宇宙人探しの始まりです。
2019年のノーベル賞。 物理学賞に輝いた、マイヨール博士とケロー博士の功績は、太陽系の外にある惑星系外惑星の発見です。
「第2の地球」を探すケプラー宇宙望遠鏡の打ち上げです(2009年)。
その後、最も目覚ましい活躍を見せたのが NASA のケプラー宇宙望遠鏡。
9年間に発見した系外惑星はなんと2600個以上にのぼりました。 惑星は自ら光を放たないため、通常の観測で見つけることは困難です。 そこでケプラーが用いたのがトランジット法という観測手法でした 。
惑星が恒星の前を横切る時の明るさの変化を測定するのです。トランジット法。 系外惑星の中で最近注目されるのが赤色矮星という恒星の周りを回るものです。 赤色矮星は私たちの太陽よりも質量が小さく、暗い星で恒星全体の3/4を占めています。
赤色矮星の方が太陽のような明るい星よりもよほど惑星を見つけやすいことがわかったのです(マサチューセッツ工科大学 サラ・シーガー教授)
太陽のような恒星と赤色矮星を比べてみると、 惑星が通り過ぎる時に暗くなる度合いが大きくトランジット法での観測に向いていたのです
2017年には地球外生命の可能性が高まる大発見もありました(2017年NASAトラピスト1の惑星系発見会見)。地球から40光年先。水瓶座の方向にある赤色矮星の周りで、地球サイズの惑星が7つも見つかりました。 しかもそのうち三つは液体の水が存在する可能性があったのです。さらに2018年に打ち上げられた系外惑星探査専用の宇宙望遠鏡 TESS。わずか1年半で1600以上もの系外惑星候補を発見(2020年1月現在 )。今、地球外生命が存在する可能性のある星が次々と見つかり始めているのです。
どんどん宇宙が見えるようになってきているんですね。この短い間にもこんなに地球外生命体がいるかもしれない候補があがっている 。
そう。ですから、サイエンスZEROでは今日は地球外生命について本気で考えていきたいと思います。専門家をお招きしています。国立天文台准教授の縣秀彦さんです。よろしくお願いします。
本当にとんでも話はなくなってきているんですね。
そうですね。1995年に太陽系の外側で初めて惑星の存在が確認されるんですね。それからこの分野は急速に進んでいて次々と胸を躍らせるような大発見が続いているんです。
実際に今まで見つかった中で 生命がいる可能性のある惑星の数はどのくらいなんでしょうか?
どのくらいだと思われます?
生命がいる条件がある程度整っているところということですよね。
そうですね 。
100ぐらいあるのかな
我々ももっとあるかもしれないと期待しているんですが、答えから先に言うとせいぜい20個程度。それは密度が分かっていて、ハビタブルゾーンと言うが、恒星からの距離がちょうど良くて、水が表面にある。
水が水として存在できる温度で、絶妙な距離感で存在していて。
そうすると、せいぜい20個程度になってしまうんですが、小島さんがおっしゃるとおりで、実際は我々が分からないだけでもっとたくさんあると思います。
冒頭に見た赤色矮星の周りに惑星がたくさん見つかっている。
そうですね。生き物探しをしたい研究者たちからすると、これは本当に可能性が高いので、赤色の太陽に比べると少し暗い、ちっちゃめの星の周りの惑星を今一生懸命探しているんですね。
恒星からの距離がちょうどよく液体の水が存在できるハビタブルゾーン。温度が低い赤色矮星の周りではより恒星に近い位置にあります こんな恒星に近い惑星では、強い重力の影響である現象が起きやすくなります。惑星が恒星に常に同じ面を向けて回る潮汐ロック。この時惑星の方側はずっと昼 。反対側はずっと夜になります。
潮汐ロックされている惑星がどんな姿なのかちょっとご覧いただきましょう。 左が恒星がある方向、右がその反対側ということになりますね。
これ一番中心の野菜のヘタのようになっているところは一体何が起こっているんですか?
ヘタのようになってる部分の真上に赤色矮星がある。 地球と違うのは、常に同じ面を向けているから、そこだけが熱くなって反対側は常に寒い。
温度の差がものすごい。
そうなんですよね。
だとするとですね、この星であれば、小島さんはどこに住みたいですか?
何か、ちょうど真ん中ですよね。このちょうど赤色矮星に照らされながら少しヘタから離れたところが住めそう。ただ帯状に住むことになりますね。
ずっと昼間でもないし、ずっと夜でもない、ずっと夕焼け、夕暮れの時間とか朝の時間でしょ?これトワイライトゾーンといって、このトワイライトの部分が生き物がいられるんじゃないかなと 期待が高まってる所ってことですね。
NASAゴダード宇宙研究所のアンソニー・デルジニオ博士。気象シミュレーションの専門家です。 潮汐ロックされた惑星にも生命にちょうどいい場所があることが分かってきました。 必ず生命は存在すると確信しています。
トワイライトゾーンを持つ惑星の環境は一体どんな環境なのか。博士のシミュレーションからその様子を再現してみました。気象シミュレーションで再現。
光が当たる面は非常に高温で巨大な積乱雲が常に発生。滝のような雨が降りますが、なんとあまりの暑さで雨粒が地表に届く前に蒸発してしまうと言います 。
ここで発生した水蒸気は、温度の低い星の裏側へ熱と水を運びます。熱い面から冷たい面向かう大気の流れが常に生まれているのです。
こうした環境に生物がいるとしたらどんな姿をしているのか ?
系外惑星探査(マサチューセッツ工科大学 サラ・シーガー教授)と地球外生命研究(ハーバード・スミソニアン博物館 デイヴィッド・アギラーさん)の権威が気象シュミレーションの結果から予想を立てました。
一定方向に強い風が吹き続けるトワイライトゾーン。その風をうまく利用する生物がいるのではないか? 考えたのがこちら。まるで空飛ぶ鯨。体長は30m、大気中の微生物を餌にし、それを消化する際に出る水素ガスを体にためて宙に浮きます。します。風に乗ったりお尻からガスが吹き出して速度や方向を変えることもできます 。
トワイライトゾーンには水が豊富にあります。水中と陸地どちらにも適応した生き物が現れる可能性があります。そこで考えたのがこちら。陸上飛び跳ねるための強靭な足腰。水中の移動に適した流線型のフォルム。トワイライトゾーンのあらゆる場所で暮らせます。
映画に出てきそうな。
そしてそれを襲う生き物もいることでしょう。それはこんな姿かもしれません。系外惑星の環境に関する科学的事実に基づいて、多くの研究者が真剣に想像を巡らせています。
ああ、そうかって。本当に科学でシミュレーションされたもの。SF でただ想像詰め込んだものじゃない少しリアルに何か入ってきました。
地球上の生物もその環境下に適応してますよね。北極、寒いとこに住んでいるような生き物と、海に住んでいる、あったかい。それぞれ違うのと同じで。本当にこういう姿がどうかは実は分かりませんけれども、体が浮きやすいんじゃないかとか、風が強い中をどう生きるかとか様々な束縛条件を与えることができる。 我々も3年ほど前に様々なこの分野の研究者の人達、権威のある方や若い研究者たちね。いろんな方々に絵を描いてもらったことがあるんです。
科学者の方にですか?
そうなんです。 それで今この映像を見てますとね、割と似てるんですよ。つまり割と流線型で待機中をプカプカ浮かんで生活してるとか(広島大学 長沼毅教授)。また海の中でもいいんですけどね(海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 高井研 部門長)。そういう生き物を想像してたりとか。
「斬新な考えの映画だね」って言われるようなことが、しっかり科学の中でありえるっていうところなんですね。
さあここまでですね、世界中の科学者が本気で地球外生命について考える時代になりますと、天文学だけではなくて生物学の研究も盛んになってくるんだですよね。そこで今熱い視線が注がれているのがこちら。アストロバイオロジーというものなんですね。
はい。アストロっていうのは、アストロノミーっていうのは天文学。英語でアストロノミーといいますよね。バイオロジーっていうのは、これ生物学ですよね。アストロ 宇宙、バイオロジー 生物で、「宇宙生物学」って言うんですね。
うわ〜、もうまさに地球外生命を探す。そしてそれがどういう生き物なのかを研究する学問ということですか?
はい、そうです。例えば私が勤めている国立天文台の構内にも、アストロバイオロジーセンターができて活動しています。
じゃあ天文学の中でも、ちょっと言い方はアレなんですけど、天文学の中でもニッチな分野ではなくなってきている。
あ〜、そのとおりですね。1995年より前は「それ本当に学問なの」とよく言われた。SFをやっているのか、本当に研究しているのかわからないような。ところが今や、特に若い研究者がどんどん参入してきている。生物と天文だけではなく、この分野は広くて、例えば化学をやってる研究者もいるし、地球惑星科学、地球の大気、天気、火山とか地質とか海洋とか、ありとあらゆる分野の研究者たちが一緒になって考えるようと。
確かにどの分野の情報もすごく有益になる分野なんですね。
そうなんです。
全部欠けちゃいけない分野ですね。
おっしゃるとおり。逆に天文学者だけでは迫れない謎に、協力することによって今次々と謎が解け始めてるっていう感じですね。
では実際どのような研究が行われているのか取材しました。
東京三鷹の国立天文台。その同じ敷地内に自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターがあります。 2019年12月、この日行われていたのは、系外惑星の生命をテーマにしたシンポジウム。系外惑星の生命。 天文学だけでなく生物学や気象学など数多くの研究者たちが集まっていました。
今日はよろしくお願いします。お招きいただきありがとうございます。
こちらは地質学の研究者。珪藻と呼ばれる地球上の最も多様な場所で生きるという植物プランクトンについて発表しました。
水と光がある星にであれば、酸素を作り出す生物の候補として、珪藻というのは一つの候補なのかなと思う(名古屋大学 地球環境科学 須藤 斎 准教授)。
地球外に生命がいるとすれば、それはどんな種なのか。熱い議論が交わされていました。
今までなかなか生物の研究者との接点というのがなかったけれども、アストロバイオロジー、つまり宇宙に生命を探す、それがどういうふうにして進化してきたかということも含めて非常に天文学者と一緒に研究しやすいテーマである。(自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター 田村 元秀 センター長)
系外惑星の生命をどう見つけるのか?その具体的な方法を研究している人もいます。植物植物学者の滝沢賢治さん(植物学者 アストロバイオロジーセンター 特任教授)。 私は地球と同じ、何か似通っているもの(植物)が見つかるような気がする。
系外惑星に地球と同じような植物が生えていれば直接見つけられるといいます。合言葉は”レッドエッジを探せ!”一体どういうことか? 滝沢さんが探すレッドエッジとは、惑星が反射で放つ光に現れる特徴です。地球では植物が光合成をする時、太陽の光のうち、可視光の部分を吸収します。 しかし、赤外線は使わないため、吸収せずそのほとんどを反射します。
この時、光のスペクトルを分析すると、可視光と赤外線の間に大きな差がある状態レッド エッジが観測されるのです。
系外惑星にこのレッドエッジが見つかれば、そこには地球と同じタイプの植物が存在する証となるのです。
太陽系外惑星において生命を探す時に可能性は無限にあると思うが、観察可能な生命の形態が何だろうかと考えていくと、おそらく一番ありそうな形態として光合成生物、植物のようなものがあると考えている。
う〜ん。可視光線を使っている星を探せということですか。
そうなんですよね。さっきのように生き物がいるかどうかって、見ただけじゃ分からないので、じゃあ次どうするかっていうと、そこから何らかの情報を引き出したいわけです。
はい。
レッドエッジが地球外生命のチェック項目になりうるかどうかは、地球上の植物と同じような光合成をしていた場合という条件になりますよね。
おっしゃるとおりですね。もちろん研究者の中には違う仕組みで星から来ているエネルギーを体の中に科学的な物質で蓄える光合成以外の方法もありうると考えてる人はいます。でもそういう生き物がいないことはないかもしれないけれど、非常にまれだろうと。それにはちょっと理屈があるんです。
生命の誕生に関わる深く関わる液体の水。原始的な植物プランクトンが繁殖し、進化するとすれば海の中だと考えられています。海の中で可視光はある程度の深さまで届きますが、赤外線は水に吸収されほとんど届きません。そのため、植物プランクトンは可視光を使って光合成するようになります。こうした植物プランクトンが陸上に進出した場合も、可視光を使った光合成の仕組みはある程度の期間を保たれるはず。アストロバイオロジーセンターの研究者たちはそう考えているのです。
可視光線を栄養にできる生物が発達しやすい?
おっしゃるとおりです。アストロバイオロジーという学問がこのように始まったことによって、レッドエッジが一番最初に生き物がこの星にいるんじゃないかということの証拠として出てくるだろうと。これまさしく天文学者だけではここまで入っていけなくて、生物学者と天文学者が一緒に考えているのでここまできている。こうやってやれば見つかるとやり方、方法論がわかってきた。
ではどうやってレッドエッジを見つけるのか? まずはこの画像をご覧ください。
真ん中は明るい星、恒星をですねマスクをして隠しています。時計の針で1時ぐらいの方向に星がありますよね。これはね、国立天文台がハワイ島のマウナケア山に造ったすばる望遠鏡。すばる望遠鏡が直接撮像した系外惑星の姿でして(2013年惑星の直接撮像に成功)、まだ光る点ですね。これでレッドエッジはちょっとわからないですね、これだけではね。ここに系外惑星があるということは分かりました。大体の大きさのような情報も分かるんですが、そっから先レッドエッジを調べるにはどうしたらいいですかね?
赤外線を撮れる望遠鏡のものすごく精度の良いものを作らなければいけない。
そうなんです。すばる望遠鏡も赤外線を受けてはいるが、大きさが足りない。光をもっとたくさん集めたいんです。
そこで期待されているのが次世代の大型望遠鏡です。日本の国立天文台が参加しているTMTを始めとして、ヨーロッパ(E-ELT)やアメリカ(GMT)のチームも口径30mクラスの望遠鏡の建設を進めています。これらが完成すれば、系外惑星のレッドエッジを観測できるようになるのです。
近づいてきてるぞ〜。
そうこれが大体みんな2020年なんですかね。そんな遠くじゃないんですよ。
近づいてきた。もうちょっと。だからその理論、地球外生命を探すための理論もどんどん熟成してきて、それを実際に捉える技術と望遠鏡自体も完成がすぐそこにきている。何か、整ってきたんだな。
宇宙望遠鏡、そして地上の超大型望遠鏡、そしてアストロバイオロジーの研究者のみなさん、この協力によってまさに地球外生命を発見する前夜に我々はいます。
はあ〜。
ここまではですね、遠い宇宙の生命の惑星を探そうという話でしたけれども、我々人類が地球外生命がいるかもしれない惑星に、直接探査機を送り込もうという計画もあるんです。
一気にSFみたいになった。
各分野を代表する科学者によって発表された計画がこちらです。
(2016年)みなさんこんにちは(スティーブン・ホーキング博士)。 私たちが今日ここにいるのは「ブレイクスルー・スターショット計画」と宇宙における人類の未来についてお話しするためです。
ブレークスルー・スターショット計画月。目指すのは地球から最も近い系外惑星、プロキシマbです。どういった計画なんでしょう?
実はですね、ここにお手紙を送ります。お手紙というのはですね、これ今大きな帆、宇宙ヨットなんですけどね、真ん中のとこにあるのがね切手サイズ、5cmx5cmのちっちゃなちっちゃな宇宙船なんですね。
真ん中が宇宙船なんですね。
ええ、そうです。そこにはですね、非常にちっちゃいけども、感度のいいカメラや通信機器やコンピュータ、そういうものを仕込ん、周りが帆でね。実際には1000個ぐらいたくさんのものを、わ〜っと飛ばすんです。それをね、このようにたくさんの光のレーザーで、この宇宙ヨットを飛ばすわけです。光のスピードのね、1/5ぐらいのスピードまで、この光の圧力、輻射圧とか放射圧という、光の力でぐっと加速させてですね飛ばしていくんです。(地球からのレーザー光の圧力で、光の1/5のスピードまで加速)
すごい!
そうすると、4光年ちょっと先ですから、20年ぐらいで届きます。
20年ぐらいで届くんだ。
そこをパチパチと記録を、写真を撮ってそれを送ってくれるので、どういう星がプロキシマbという、地球に一番近い系外惑星の姿を、そこに生き物いるといいなと思っているんですけども、解き明かしてくれると。
実際に見れますね。
はい。プロキシマ b の環境が安定していれば、生命が誕生していてもおかしくないだろう。ハビタブルでサイズもちょうどいい。これから開発に20年近くかかる、実際に飛んでいくのに20年、返事は4年。
44年後ですね。
そうですね。
生きているうちですよ。
本当に良い時代。地球の外に人間以外の生命体が「あの時あの時代にわかったんだよ」って歴史に残るタイミングかもしれないですよね。
もし知的生命体さえ見つかるような時代になっていけばですね、地球上の我々の考え方、生き方を見直す大きなきっかけになるのは間違いないですし。
外を知って自分たちのことが初めてわかりますね。
分断されがちな現代社会の中で、みんなで協力しましょうということへの、手を取り合う力になっていくといいなと思ってますね。
ただの SF のようなの話かと思ったら、一歩一歩積み重ねてきた科学者の方の力によって、実際にそんなに遠い未来じゃない先に、すぐそこまで来ているんだなという印象を受けましたね。このアストロバイオロジーという分野の目指してるところの過程も、私にとって地球という一つの住みかをおんなじ、ただ人間っていう一つのまとまりになれる、すごくこう、その向かっている先も大事ですし、この過程も私たちに、すごい、何か大きな考え方をもたらしくれるなと思いました。
縣さん、今日はどうもありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」次回もお楽しみに。
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