こんにちは!
この記事では、『サイエンスZERO』2020年12月6日放送の「徹底解説!ノーベル賞2020 世界を変えた研究が勢ぞろい」のエッセンスを紹介していきます!
今年のノーベル賞は世界を変えたともいうべき歴史的偉業ばかり。医学・生理学賞のC型肝炎ウイルス研究の発展には日本の研究者が大きく貢献!ウイルス研究の受賞は、新型コロナと闘う人類への大きなメッセージも。物理学賞が贈られたのはブラックホール研究。天の川銀河の中心に存在する超巨大ブラックホールを発見した驚きの方法とは!?化学賞を受賞した画期的なゲノム編集技術は日本でも医療応用が進む。ノーベル賞を徹底解説!
サイエンスZERO「徹底解説!ノーベル賞2020 世界を変えた研究が勢ぞろい」放送日と出演者は?
【放送日】2020年12月6日(日)午後11時30分~0時
【司 会】小島瑠璃子、森田洋平
【解 説】土屋敏之
【出 演】国立感染症研究所所長…脇田隆字、京都大学iPS細胞研究所主任研究員…堀田秋津
【語 り】利根川真也
【再放送】 2020年12月13日(土)午前11時~11時30分
サイエンスZEROで2020年ノーベル賞を解説!医学・生理学賞、物理学賞、化学賞を詳しく紹介!!
サイエンスZEROで紹介していたのは、医学・生理学賞、物理学賞、化学賞の3つの部門についてでした。この3部問での受賞は科学分野における世界最高の栄誉という位置づけとのこと。
今年の受賞者には残念ながら日本人受賞者はいませんでしたが、受賞テーマの縁の下の力持ち的な大きな貢献をしているんだとか。このあたりのことも詳しく述べていこうかと思います。
ノーベル賞全体ではこの他に、文学賞、平和賞、経済学賞があるんだそう。
サイエンスZEROで2020年ノーベル賞を解説!医学・生理学賞はC型肝炎ウィルスの発見で3人が受賞!
★アメリカ 国立衛生研究所のハーベイ・オルター博士
★カナダ アルバータ大学のマイケル・ホートン博士
★アメリカ ロックフェラー大学のチャールズ・ライス博士
の3人がC型肝炎ウィルスの発見で受賞!おめでとうございます!
この3人の研究がバトンリレーすることで、C型肝炎ウィルスが発見され、そのウィルスによって病気が引き起こされることを証明することができたんだとか。
この間およそ30年もの年月をかけた大発見だったんですね!
そしてバトンリレーはまだまだ続いていて、C型肝炎ウィルスを実験室で人工的に培養する技術を開発に成功したのが日本の脇田さん(現 国立感染症研究所 所長)。2005年のことでした。
この技術を使って、世界中でC型肝炎ウィルスの研究が進んだ結果、効果的な飲み薬が2011年に登場。2011年時点で世界中には1億7000万人もの感染者が、現在では8000万人まで減ってきていて、今では治る病気になったとのこと。今では薬を飲めば95%の人は治るんだとか。
治せない病気が治せる病気へと変わったっていうのは、劇的な進化ですよね!日本では現在でも肝臓がんの最大の原因がC型肝炎ウィルスということですけど、これからは状況が好転してくるんでしょうかね?
治せる薬があるのに、肝臓がんの原因であり続けているのには他の要因があるんでしょうかね?ちょっと不思議に思っちゃいました。
ステップ1:ハーベイ・オルター博士の功績は?肝炎を発症させる未知のウィルスの存在を確認!
まずは第1ステップ。ここを担ったのがハーベイ・オルター博士。
輸血を受けた人に肝炎患者が多いことに着目して血液を調べたところ、病気の原因がすでに知られていたA型肝炎ウィルスによるものでもB型肝炎ウィルスによるものでもないことが判明。
さらに新型肝炎の患者の血液をチンパンジーに輸血したら、チンパンジーも肝炎を発症してしまったんだとか。そこでチンパンジーの血液を調べたところ、ウィルス特有の成分が発見されたということです。
こうして肝炎を発症させる未知のウィルスの存在を確認できたのが1970年代。ただし、ウィルスの正体まではこの時点ではつかめなかったとのこと。
人間の血液を調べただけだと分からなかったものが、チンパンジーでは分かったというのがものすごく不思議ですよね?何が違うんでしょうね??
ステップ2:マイケル・ホートン博士の功績は?C型肝炎ウィルスの発見!
続く第2ステップは、マイケル・ホートン博士の研究。C型肝炎ウィルスの正体を突き止めたんです!
正体をつかむための武器となったのが、DNAやRNAを分析する技術。1989年にウィルスのRNAの断片を発見したことで、C型肝炎ウィルスの発見に至ったということです。
この発見によって、輸血用血液の中にC型肝炎ウィルスがいるか調べることができるようのなったことで、輸血で感染することが激減したんだとか。
またまたすごい功績ですよね。
ステップ3:チャールズ・ライス博士の功績は?C型肝炎ウィルスが未知の肝炎の原因であることを証明!
C型肝炎ウィルスが発見されたとはいえ、このウィルスによって新しい肝炎が引き起こされているという証明まではできてないですよね。これを担ったのがチャールズ・ライス博士でした。
遺伝子操作によってウィルスの全遺伝子が入ったRNAを作成して、チンパンジーの肝臓に感染させたところ、やっぱり肝炎を発症。こうしてC型肝炎ウィルスが病気の原因であることが証明されたんだとか。このとき1997年のことでした。
サイエンスZEROで2020年ノーベル賞を解説!物理学賞はブラックホールの研究で3人が受賞!
★イギリス オックスフォード大学のロジャー・ペンローズ博士
★ドイツ マックス・プランク地球外物理学研究所のラインハルト・ゲンツェル博士
★アメリカ カリフォルニア大学のアンドレア・ゲッズ博士
の3人がブラックホールの研究で受賞!おめでとうございます!
こちらもやはりリレーによる研究の盛り上がりの結果によってブラックホールの発見に至ったようですね。知識や情報の蓄積によって階段を一つずつ登っていくのが科学なんでしょうね。
ロジャー・ペンローズ博士の功績は?ブラックホール存在を数学的に証明!
ことの発端はアインシュタインが導き出した一般相対性理論の中に出てくる数式の解釈。
「=(等号)で結ばれる数式の、左側が空間のゆがみをあらわし、右側が物質の存在をあらわす」
と解釈できる有名な数式があるそうな。
一般相対性理論でググってみたものの、訳のわからない数式がたくさん出てきたので調べるの断念しましたが、そんなのがあるらしいデス。
この数式は、物質が存在すると空間がゆがめられる、ってことを表現しているんだとか。
太陽みたいな重量の天体があるとその周りの空間がゆがめられ、本来直進する光もゆがんだ空間に沿って進むことで曲げられちゃうらしい。
で、天体の重量がめちゃめちゃ重くなったら、空間もものすごくゆがめられ、引きずり込まれたら光でさえ出てこれなくなってしまうんだとか。なんと、これがブラックホール!
アインシュタインの数式を見て、理論上ブラックホールができるんじゃね?って考えた人はそれなりにたくさんいたらしいけど、ロジャー・ペンローズ博士が初めてブラックホールが形成されることを数学的に証明したんだとか。
ロジャー・ペンローズ博士の証明によってブラックホールが宇宙のどこかにあるってことがはっきりしたことで、ブラックホールを見つけるための観測もにぎわうことになったんだそう。
そして、実際に見つけたのが物理学賞を受賞した残る2人なんです。
アンドレア・ゲッズ博士の功績は?ブラックホールの発見!
詳しく解説してくれたのは、ノーベル賞受賞者のゲッズ博士ご本人。研究が楽しくってしょうがないってオーラを放ちまくっている研究者でした。
ブラックホールそのものは見ることができないので、その周囲の天体を観測することになるんだとか。
着目したのは、巨大なブラックホールがあるはずと言われている天の川銀河の中心部。ここに望遠鏡を向けて星の動きを観測を続けたんだそう。
星の動きを長期間観測し、星が何もない空間を中心に回っていることがわかれば、そこにブラックホールがある証拠になるんだとか。
ハワイ・マウナケアにあるクック天文台で観測が始まったのが1995年のこと。観測を続けること7年、2002年に不思議な動きをする星をようやく発見!
この不思議な星は、秒速5000kmで動きながらも急旋回していることが観測されたんだそう。しかもこの星は太陽の10倍以上の質量の天体なんだとか!
秒速5000kmで動く太陽の10倍以上の質量を持つ天体を振り回すだけの重力を持つ天体こそがブラックホール。その質量はなんと太陽の400万倍という途方もないサイズの天体になるんだとか。
もうどんだけすごいのか良く分からん規模感ですよね〜
このブラックホールの発見の功績によってゲッズ博士は物理学賞を受賞することになったんです。
ラインハルト・ゲンツェル博士の功績は?実はゲッズ博士のライバル!
こちらも同じ天体を観測し、ほぼ同時期に同じ結論に至ったということ。やはり天の川銀河の中心に向けて南米チリの望遠鏡で観測を続けたんだとか。ほぼ同時期というのが奇遇ですよね?
サイエンスZEROで2020年ノーベル賞を解説!化学賞はゲノム編集の新技術開発で2人が受賞!
★ドイツ マックス・プランク感染生物学研究所のエマニュエル・シャルパンティエ博士
★アメリカ カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ博士
の2人がゲノム編集技術の開発に成功した功績で受賞!おめでとうございます!
この2人の共同研究によって開発されたのが、クリスパー・キャス9(ナイン)システムというもの。
これまでのゲノム編集が職人技の難しい技術が必要で、誰もが使えるようなものではなかったんだとか。ところが、このクリスパー・キャス9システムは誰もが使いこなせるようになった画期的な技術なんだということです!
クリスパー・キャス9システムの仕組みは?
もともとは微生物が持っていた仕組みを応用したものなんだとか。開発されたシステムのミソは、キャス9とガイドRNAのふたつ。
キャス9は酵素の一種で、DNAを切るハサミの役割。
ガイドRNAは、キャス9でDNAを切断する場所を教える役割。
しかも、ガイドRNAの配列を変えることで、切る場所を自由自在に変えることができるという優れもの。この二つの作用を利用することでゲノム編集を可能にしているんだということです。
切断できることは分かったんですけど、つなげる必要はないんでしょうかね?切ってつないで編集できたことになるような気もするんですけどどうなんでしょうね?
クリスパー・キャス9システム+IPS細胞で難病治療に挑む!
このゲノム編集技術を使って医療に応用する研究がすでに進められているんだそう。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーという難病。遺伝子の変異によってジストロフィンという筋肉の細胞膜を支えるタンパク質が作れなくなるという病気だということです。
この難病の治療方法の確立を目指して研究を進めるのは、京都大学IPS細胞研究所の堀田さん。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さん自身の細胞から作成したIPS細胞から筋肉の細胞を作って移植することを考えているといいます。
でも、そもそも患者さんの細胞は遺伝子が変異しているためこのままでは使うことができません。そこで、IPS細胞にクリスパー・キャス9を使って病気の原因となる遺伝子を切り取ることに挑戦!
この合わせ技で作った筋肉の細胞は健康な人の筋肉と遜色ないくらいのジストロフィンが生成されていることが確認できたということでした。
クリスパー・キャス9システムのリスクについても堀田さんがお話をしていました。
このシステムは人体に無害なウィルスの力を借りてゲノム編集をしたい細胞の中にクリスパー・キャス9を侵入させているとのこと。細胞に入った後にもともとのウィルスのゲノムが残っているとハサミ役の酵素であるキャス9がどんどん新しく作られてしまい、関係ないところまで切断してしまうんだとか。これをオフターゲット効果というそうな。
堀田さんはオフターゲット効果のリスクを数十分の1まで下げることに成功したんだそう。その秘訣は、ウィルスの殻だけを使い、この中にクリスパー・キャス9とガイドRNAを入れることでリスクが大きく下げることができたということなんだとか。
これ、以前サイエンスZEROで紹介していたマラリアワクチンと同じ仕組みかもしれませんね。(『サイエンスZERO「挑戦者たち! 新型ワクチン開発で世界を救え」マラリアワクチン』)
まだまだこれからも安全性の確認含めて、超えなければならないハードルがあるようですが、患者さんにとっては希望が見えてくる成果ですよね。
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