サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)を紹介!マルチメッセンジャー天文学の幕開け!

サイエンスZERO

こんにちは。

NHK Eテレで放送している『サイエンスZERO』。毎回毎回いま話題の最先端の科学と技術をとっても分かりやすく解説してくれるので、ワタクシの大好きな番組でもあります。今回は、2020年3月8日放送の「潜入“KAGRA”望遠鏡 天文学革命はじまる!」をご紹介します!

アンコール放送。日本の重力波望遠鏡「KAGRA」の稼動直前、特別な許可を得て内部を潜入取材した。地下深く、技術の粋を集めた装置の心臓部には、驚きの素材が使われている。じつは、KAGRAによる重力波の観測がはじまると、可視光、赤外線、電波などを観測している従来の望遠鏡が何倍も有効に使えるようになるという。キーワードは「マルチメッセンジャー天文学」。天文学に革命的な変化を与える、その理由とは?

サイエンスZERO〜放送日と出演者

【放送日】2020年3月8日(アンコール:初出2019年10月6日)

【司 会】小島瑠璃子、森田洋平
【ゲスト】国立天文台 教授…渡部潤一
【語 り】川野剛稔

【放 送】 毎週日曜 [Eテレ] 午後11時30分~0時
【再放送】 翌週土曜 [Eテレ] 午前11時~11時30分



重力波望遠鏡KAGRAとは?サイエンスゼロで解説🎶

サイエンスゼロが放送されたおよそ4ヶ月後の2020年2月、KAGRAは本格稼働を開始しました。世界で4番目、アジアでは初となる重力波望遠鏡KAGRAと、先に稼働しているアメリカとヨーロッパの重力波望遠鏡との連携によって、宇宙のどこから重力波がやって来ているのかピンポイントで方向を判定することができるんだとか。

重力波望遠鏡KAGRAはどこにある?

KAGRAは岐阜県神岡町の山中地下深くに設置されています。ニュートリノ観測施設のスーパーカミオカンデと同じ山中にあるようですが、木々の緑以外にほとんど何も見えない山の中ですね。岩盤のしっかりした地下に総延長7.7kmもの地下トンネルを掘った中に、KAGRAは設置されています。

重力波って何?それを観測するとどんなことが分かるの?

重力波っていうのは、デカくて重い天体が動いた時に、その周りの空間がゆがんで、その歪みが波となって光の速度で伝わる現象なんだとか。アインシュタインが存在を予測したようですが、観測が難しくて当時は確認できず、「アインシュタイン最後の宿題」となっています。それが今、さまざまな重力波の観測から100年越しの宿題の答え合わせができたということですね!

重力波は、実は常に地球に届いてはいるものの、非常に微弱なので検出できないもの。でも、ブラックホール同士の合体、超新星爆発、中性子星同士の合体のような、ちょっと想像もつかないようなドハデな現象が起こると観測できる。そして、重力波の観測により、次のことが分かるようになるといいます。

  • アインシュタインの相対性理論が正しいかどうかが確認できる。← 正しかった!
  • 新しい観測手段を得ることでマルチメッセンジャー天文学が始まる。←奇跡の2週間!



重力波望遠鏡KAGRAの仕組みはこうなってる!サイエンスゼロで解説🎶

KAGRAの先輩として、アメリカの2つの重力波望遠鏡LIGO、ヨーロッパの重力波望遠鏡Virgoが稼働しています。KAGRAは観測精度を高めるために、岩盤のしっかりした地下に設置、人工サファイア鏡の熱振動を抑制するための-253℃の超低温冷却という独自技術を投入!

KAGRA建設や観測性能の鍵となるサファイア鏡の詳しい様子は次の動画を見てくださいね。

直交する長さ3kmの2本の真空パイプ内にレーザー光を振り分けて投射。レーザー光はパイプ内に設置された鏡で反射され、通常は同じタイミングで戻り、このときレーザー光の波同士が打ち消しあうために何もセンサーに検出されない。ところが、重力波によって空間が歪むと、2本のパイプの長さがわずかに変わり、波同士が打ち消し合わずセンサーに検知される。これによって、重力波が観測できるという原理。重力波による変化量がなんと水素原子1個の1億分の1以下なんだとか。めちゃめちゃ小さい!!ということ以外分かりません!

重力波望遠鏡が切り拓くマルチメッセンジャー天文学とは?サイエンスゼロで解説🎶

超新星爆発や中性子星の合体ではまず最初に重力波が届き、その後遅れて光や電波が届くといいます。重力波を観測するKAGRAなどの重力波望遠鏡がまず気づき、アメリカやヨーロッパの重力波望遠鏡と連携することでその重力波がどこから来たのかピンポイントでその方向を解析できる。これによって、そのあとにやってくる光や電波を観測するために世界中の望遠鏡をその方向にすぐに向けることができるため、さまざまな手段で天体現象の観測をすることができる。このように多面的に天体観測することができることを指して「マルチメッセンジャー天文学」と呼んでいるようです。重力波観測のおかげでたしかにマルチ(=いろんな)なメッセージ(=情報)を多面的に捉えることができるようになるんですね。

2017年8月17日に、実際にマルチメッセンジャー天文学として”奇跡の2週間”と呼ばれる中性子星合体の観測が行われました。最初に重力波を観測したのはアメリカの重力波望遠鏡LIGO。ヨーロッパのVirgoと連携することで重力波のやって来たおおよその方向を割り出しました。この時はピンポイントでの位置特定には至っていませんが、南米にあるスウォープ望遠鏡による可視光観測によって位置特定に成功!その距離1億3000万光年!ハワイにあるすばる望遠鏡もその姿を捉えたそうです。

次は赤外線の観測。名古屋大学が南アフリカに設置したIRSF望遠鏡が中性子星同士の合体によって金やプラチナのような重い元素が生成されていることを捉えます。

さらに、電波を観測。南米チリのアルマ望遠鏡が活躍しました。

たった一つの重力波をきっかけに、世界中の70もの望遠鏡が連携した観測を行った奇跡の2週間。マルチメッセンジャー天文学の幕開けです!



サイエンスゼロ〜放送内容(ほぼ)全文

潜入“KAGRA”望遠鏡 天文学革命はじまる!

山奥に掘られた怪しげな一本のトンネル、誰が何のために造ったのか。奥に進むとまっすぐなパイプが延々と伸びています。実はこれ全く新しい宇宙観測機器だといいます。その根元を辿っていくと・・。地下に突然現れた、まるで秘密基地のような空間。巨大な装置の正体は?

非常に危険な強いレーザーになってます。

危険なレーザー?一体それで何を?

重力波を検出する上では非常に重要になっていまして。

観測するのは重力波。アインシュタインが存在を予言した宇宙空間を伝わる巨大な波です。この地下施設の名はKAGRA。 まもなく観測を始める日本の重力波望遠鏡です。

今回「サイエンスZERO」のカメラが特別な許可を得て本格稼働直前のKAGRAの内部に潜入しました。

重力波が持つ驚きの特徴を利用すれば、宇宙観測に革命を起こす新たな天文学が始まるといいます。

この日本に重力波の観測拠点ができるということが一番大きな意義で、マルチメッセンジャー天文学がこれからどんどん拡大していくと期待しています。

世界中の望遠鏡を巻き込むマルチメッセンジャー天文とは一体どんなものか? 鍵を握るのが重力波望遠鏡KAGRA。その全貌に迫ります。

岐阜県神岡町。その山中には2015年のノーベル賞受賞につながったニュートリノの観測施設スーパーカミオカンデがあります。それを直角に挟むように延びた長〜い地下トンネルが今回の舞台です。入口はこんな感じ。その名もんかぐらトンネル。総延長は7.7 km。完成まで4年の歳月がかかりました。その奥深くへ早速潜入取材開始です。

取材班は目を守る特殊なゴーグルをかけ、KAGRAの心臓部を目指します。天井も壁も岩盤むき出し。異様な地下空間にそれはありました。重力波望遠鏡KAGRAです。

重力波とは巨大な質量を持つ天体が動いた時、空間に歪みが生じ、それが波となって光の速さで伝わる現象です。天才アインシュタインがおよそ100年前に存在を予測しましたが、観測が非常に難しいことから「アインシュタイン最後の宿題」と言われてきました。それを捉えるために必要となるのがある特別な装置です。

こちらの真空チューブの向こう側に白い建物が見えると思うんですけど、あの中にKAGRAで使っているレーザー光源があります。非常に危険なすごく強いレーザーになっています。

超強力レーザーを真空に保ったパイプ内に発射。地下を駆け巡るレーザーを使って重力波を検出するというのですが、その仕組みはこうです。

これがKAGRAの全体像。アームと呼ばれる2本の真空パイプが直角に配置されています。それぞれ完全な直線で長さは3 km にもなります。この中をレーザー光が行き来します。2本のアームに振り分けられたレーザー光は通常同じタイミングで戻ってきます。この状態だとレーザー光の波同士が打ち消しあうため、何も検出されません。ところが重力波で空間が歪むと、2本のアームの長さがわずかに変わり、光が戻るタイミングがずれます。するとレーザー光の波同士が打ち消し合わず、センサーによって検出されるのです。

現在、世界には4台の大型重力波望遠鏡(Virgo、LIGO、KAGURA)がありますが、KAGRAは世界一の観測性能を目指して独自の技術が結集されています。

中でも他を圧倒しているのがレーザーを反射する4つの鏡です。この巨大装置に入った鏡の秘密とは?

この装置の中には-253℃まで冷却されたサファイア鏡が入っています。

そう、鏡を作る素材として採用されたのは宝石で知られるサファイア。しかしただのサファイアではありません。こちらがその実物。超高純度の巨大サファイアを特殊な方法で人工的に作りました(直径22 cm、 重さ23 kg)。 サファイアは熱伝導率が高く、極限まで冷やすことができます。 そのため、熱による表面の揺らぎを最小限にできます。 実は鏡の精度こそ重力波観測の鍵です。

重力波が到来した時に鏡が動く量というのが非常に小さいものでして、大きさとしましては、水素原子1個の1億分の1以下というものすごく小さいものになっています。

なんと重力波による空間の歪みの大きさは宇宙で最も小さな原子である水素原子の1億分の1以下。
これまでの重力波望遠鏡でも鏡には特殊な素材が使われていましたが、熱による揺らぎが観測を邪魔していました。KAGRAはそれを克服するために、超低温のサファイア鏡を世界で初めて導入したのです。さらに鏡の性能を最大限に引き出すため、固定する装置にも工夫があります。鏡の上に伸びる煙突のようなもの。実はこの中に長さ14 mもの振り子状の防振装置があり、観測を邪魔する振動が来ても影響を最小限にすることができるのです。
まさに人類の英知の結晶!すごいですね科学者の皆さん!

あっ、あれ?・・・と言っている間に誰もいなくなってしまいました。いったいどこに?その答えはトンネルを出て山道を走ることおよそ5キロ。着いたのは一見町の公民館にも見えるこちらの建物。玄関からお邪魔しま〜すと入ってすぐ横を見ると・・・。何と、 壁を埋め尽くす50を超えるモニターにデータや画像がずらりと映し出されています。実はここがKAGRAのコントロールルーム。
なぜ離れた場所にあるかというと・・。

人が近くで活動してしまうとそれがノイズになってしまうということで干渉系の制御を行うのはこの離れた建物から全てリモートで行うということをしています。

人が歩くわずかな振動もなくすため、最終的にはこの部屋からすべて遠隔操作します。世界一の観測性能を目指してついに完成したKAGRA。 まもなく本格的に重力波の観測を開始します。

今までとほんとに全く違う望遠鏡なんですねKAGRAは。
そうなんですね。
すごかったですね。
でもすごかったですね。その精度を上げるためにもう考えられるすべてのことをやっていらっしゃるという感じですね。
この重力波っていうのは、 地球にはたくさん届いているものなんですか?
ええ。常に届いてはいるんですけど、でもほとんどのものはですね非常に微弱なので検出することは不可能なんですけども。非常に大きな天体が急に動いたりっていうことがあるとですね、宇宙中にそういった重力波が伝わっていくと。まあ、言ってみれば池に石を投げると波紋が広がりますね。ちっちゃなものだと波紋も小さいんですけどおっきな石を投げるとドーンと大きな波が立つ。その大きな波をとらえたいってことですね。
重力波がどんなもんなのかイメージを掴んでもらうために聞いていただきたいものがあるんです。実際に観測された重力波を音に変換したものです。どうぞ。

気持ちいいい!なんかすごい気持ちいいですね。ウォッて最後。最後何か数値が上がったのは何ですか?
これは2017年に中性子星という非常に重い星と重い星がぐるぐる回ってるのが合体するまでの重力波を音に変換したものなんですね。大きなものがぐるぐる動いているのでそれだけ重力波が出るんですけど、だんだんだんだん近づいていくと周期が短くなる。だから音が甲高くなるんですよ。
で・・ つながった瞬間に一番上まで。
そうですね。はい。
その瞬間重力波はなくなるということですか?
合体しちゃうと一つのものになりますので、それから先はですねあまり重力波は出てこないですね。はい。
重力波を観測するとどんなことがわかるんですか?
これはね、大きく2つあると・・。1つはアインシュタインが予言したことが正しいか。相対性理論が正しいかどうかですね。これはもう確実に今回ですねたくさんの重力波がわかってますので正しかったということが言えるんですね。
は〜 すごいな。
大きな宿題が解けたわけですね。
そうですね。はい。もう1つはこの重力波を検出することによってですね、今まで天文学者が見ていた手段ではない重力波という手段でその天体現象を宇宙を探る一つの新しい手段ができたということで、そういう意味ではですねマルチメッセンジャー天文学の始まりであるということがいえるんです。

初めて聞く言葉が出てきました。マルチメッセンジャー天文学。この「マルチ」っていうのは「複数の」。「メッセンジャー」っていうのは何かこう「情報を運んでくる」。電磁波以外に重力波といった全く違う手段を新しく我々が手にしたっていう意味では、本当の意味でのマルチメッセンジャー、電磁波以外の重力波というメッセージを読み解くことでさらに天体現象を詳しく調べることができるということになるわけですね。

実は今、重力波の観測によって天文学が大きく変わろうとしています。まず、大きな重力波を出す現象を見てみましょう。
1つ目は、ブラックホール同士の合体。莫大な質量を持つ天体が衝突する壮絶な現象ですがほとんど光を発しないため、これを見つけられるのは重力波望遠鏡だけです。
次に超新星爆発。巨大な星が最後に大爆発を起こす現象です。宇宙の様々な元素を生み出す重要な現場として知られています。
そして今、天文学者が、特に注目するのが中性子星同士の合体。中性子星は超新星爆発のあとに出来る超高密度の星です。合体する時、さらに様々な元素を生み出しいてることが分かってきました。

こうした宇宙のビックイベントが起きた時、重力波望遠鏡の観測は、他の望遠鏡にとって非常に重要な情報を与えてくれるといいます。



実はですね、超新星爆発やあるいは中性子星の合体っていうのはまず重力波が一番最初に届くんです。
光よりも?
そうですね。中性子星同士の合体だけでは光は出ませんで、その影響が周りに伝わって火の玉ができて、その中でたくさんの元素ができて物質ができて、それが光を発するようになるまでちょっと時間がかかるんです。
そうなんですか。
その時間差が少しあるので重力波が来たぞというのが分かると、光の望遠鏡や電波望遠鏡が遅れてやってくる光や電波を捉えることができる。言ってみれば、光の手紙を読み解いているようなものですね。これを赤外線や紫外線やガンマ線など波長の違うもので読み解いていくことで多面的に天体を調べることができるんですよ
それがマルチメッセンジャー天文学ですか!
そうですね。はい。

他の望遠鏡に方向示して協力できるんですね。
そうなんですよ。
分かりやすいですね。なるほど だからマルチメッセンジャー天文学という言葉が生きてくる。
そんなマルチメッセンジャー天文学の本格的な幕開けを予感させる大事件が、実は2年前2017年に起きていたんですよね。
17年が中性子星合体ですか?
はい、そうですね。
まさにその現象なんですけれども、天文学史上に起こる奇跡の2週間とも呼ばれているんですね。一体何が起こったのかご覧ください。

2017年8月17日。この日世界各地に散らばるおよそ1000人の科学者にある緊急情報が届きました。それは重力波検出を知らせるサイン。情報を発信したのは稼働して間もないアメリカの重力波望遠鏡LIGOでした。早速世界中の科学者が分析に取り掛かります。するとその重力波は中性子星同士の合体によるものであることがわかりました。

さらにアメリカとヨーロッパの観測データを統合することで、重力波が宇宙のどの方向からやってきたのかおおよその見当をつけることに成功します。この情報はすぐさま世界中の天文台に伝えられ、一斉に観測の準備が始まりました。 重力波の発生源をめがけ、様々な方法で観測観測が行われます。まず動きがあったのは目で見える光、可視光です。ちょうど日没を迎えていた南米のチリ。アメリカの若手研究チームが緊急観測に入りました。彼らが使ったのはスウォープ望遠鏡。作られて50年近くがたつ古い望遠鏡です。狙うのは重力波が発生したとされる方向。一見かなり絞り込めているように見えますが、そこは広大な宇宙空間。無数の銀河が存在しています。チームはその中から重力波の発生源となった可能性が高いこのエリアを選び出し、次々と撮影していきます。すると9番目のエリアでついに1億3000万光年離れた銀河に突如現れた中性子星合体による光を見事見つけたのです。

発生源特定の知らせを受け、世界中の巨大望遠鏡が次々とその銀河に向けられました。ハワイにある日本のすばる望遠鏡も日没を待たずに観測を開始。搭載した世界一大きなCCDカメラで撮影に挑みました。これがその時の画像。ぼんやり光る銀河の中に確かに捉えました。

続いて行われた赤外線の観測ではある重大な発見がありました。中性子星同士が合体すると超高温の火の玉ができます。その中では金やプラチナなどの重い元素が生まれると理論上考えられていました。しかしそれが起きてる現場を観測したことは一度もありません。動き出したのは名古屋大学が南アフリカに設置したの望遠鏡(IRSF望遠鏡:近赤外線3色カメラを搭載)。中性子星合体の現場からくる赤外線を2週間に渡って記録し続けました。もし理論が正しければ金やプラチナなどの元素が作られる時およそ2週間にわたり強い赤外線が発生するはずです。研究者たちは固唾を飲んで観測を見守りました。
すると、赤外線の観測結果は、予測した値とピタリと一致したのです。私たちの住む宇宙に重要な元素を生み出している現場を、人類は初めて捉えることができたのです。
さらにその後も観測は続けられました。波長の長い電波です。電波を捉えるのはレンズではなくパラボラアンテナ。南米チリにあるアルマ望遠鏡も動きました。中性子星が合体した直後の強い光が収まった後、中心から伸びるジェットが周囲のチリやガスとぶつかって電波が放出されます。こうした一部始終を観測し続けたのです。

たったひとつの重力波をきっかけに世界中の70もの望遠鏡が動いた奇跡の2週間。それはマルチメッセンジャー天文学という新たな宇宙観測の本格的な幕開けとなったので す。

ワクワクしましたね。すごい。もうだから地球規模でいろんな波の望遠鏡で一点を見つめたわけですね。
総力戦ですよね。必死になって観測する人は観測するし、計算する人は計算するしね。論文書く人一生懸命論文書いてたと思います。はい。これはね本当に寝られなかったんじゃないかと思いますよ。観測している側はね。
嬉しい忙しさ。
そうですね。
本当に地球規模のお話ですね。国も関係なければ全部のところで情報共有していろんなことが見えてわけですね。やっとこの重力波望遠鏡の凄さがまっすぐにわかりましたね。



このKAGURAが動き出すと、他の3台とも連携するんですか?
ええ。これはね、ちょうどアメリカとヨーロッパの真ん中にあるでしょ?
本当ですね。
この地図でもね。そこにあることでどの方向からやって来るかがもっと正確に決まるんですよ。
へえ〜。
これはもう世界中から期待をされているんですね。はい。
多角的に重量波が来た方向を計算できるようになるって事ですか?
そうなりますね。はい。
やはりKAGURAが加わると、さらにですね精度よく方向が決まるんですね。そうすると最初の探すっていう時間がなくなるんですよ。もっと精度良く決まると、ここだとピンポイントで分かるので多くの望遠鏡が起きた初期からデータを取ることができるってことになるので、もう少しその始まりの段階っていうかね、ブラックホールでも中性子星でも合体した直後からのデータが出るということになると思います。
集中しやすいんですね。
はい。今ちょうどこの秋にですね、LIGO、Virgo、そしてKAGURAも加わって協力して観測する期間を今定めてますので、4つが動き出して、その時に何が捕まるかですね。非常に楽しみですね。

KAGURAの稼働によってこれまでの望遠鏡がさらに有効活用できるようになる天文学の新時代。それに加えて一つ一つの望遠鏡にも革命的な進歩が始まっています。これはハワイに建設が予定されている超大型天体望遠鏡 TMT(Thirty Meter Telescope)です。光を捉える鏡の大きさは30mにもなります。日本、アメリカ、カナダ、中国、インドの国際協力で建設が進められています。
そしてこちらは NASA が中心となって開発する新型のジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡です。すでに組み立てを終え2021年には宇宙に打ち上げ予定。こうした次世代の望遠鏡もマルチメッセンジャー天文学の強力な一員となるのです。

重力波望遠鏡も誕生して一つ一つの望遠鏡の精度もパワーアップして、どんどんこの宇宙が広がって。見える宇宙が広がっていきますね。
ええ。そうですね。おっしゃるように今まで我々は見えていた世界で色々と宇宙を考えていた。新しい望遠鏡や新しい手段が増えるとどんどん見える範囲が広がってくるんですね。それによって今まで知らなかったことやなかなかわからなかったことが分かってくという時代になってますね。
見れる世界が本当に変わりそうですね。
はい。全くわからないような現象が見つかったりあるいはまったく今まで知られていないような種類の天体が見つかったりということが起こりうる時代だと思いますね。
マルチメッセンジャー天文学というその天文学の時代が変わる瞬間。それはKAGURAがすごく大きな役割を果たしていて、何か日本人として嬉しいなって思いますね。あとはこの天文学というもの。一気に地球規模で新しいものを知ろうっていう、その何か知の好奇心みたいなもので一つになる、団結するっていうものがマルチメッセンジャー天文学なのかなって思いました。

渡部さん今日はありがとうございました。

それでは「サイエンスZERO」次回もお楽しみに。



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