サイエンスZEROでアスリートを支える!義足&車いすテクノロジー最前線を紹介!

サイエンスZERO

こんにちは。

NHK Eテレで放送している『サイエンスZERO』。毎回毎回いま話題の最先端の科学と技術をとっても分かりやすく解説してくれるので、ワタクシの大好きな番組でもあります。今回は、2020年3月15日放送の「アスリートを支える!義足&車いすテクノロジー最前線」をご紹介します!

義足や車いすなど、パラアスリートを支える「競技用具」は、近年急速な進歩をとげている。強靭でしなやかな素材、計算しつくされた形状、そして、経験と勘が活きる職人技。たった1つの部品にもさまざまな科学がつまっている。開発現場に密着すると、選手たちの声に応えようと根気強く取り組む技術者たちの姿が見えてきた。パラスポーツをより深く楽しむために、知られざる競技用具のサイエンスに迫る。

サイエンスZERO〜放送日と出演者

【放送日】2020年3月15日(アンコール:初出2019年10月27日)

【司 会】小島瑠璃子、森田洋平
【ゲスト】国立研究開発法人産業技術総合研究所研究員…保原浩明
日本パラ陸上競技連盟副理事長…花岡伸和
【語 り】大嶋貴志

【放 送】 毎週日曜 [Eテレ] 午後11時30分~0時
【再放送】 翌週土曜 [Eテレ] 午前11時~11時30分



競技用義足でパラスポーツアスリートを支える!最新テクノロジーをサイエンスゼロで解説🎶

競技用の義足は1980年代に素材としてCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)が使われるようになり、競技記録は飛躍的に伸びました。現在、競技記録を追い求める競技用義足に関しては、ブレード仕様(形状設計やCFRP積層設計)と各アスリートへのフィティングが重要なんだとか。どういうことなんでしょうか?

ブレードの役割は大きく2つ!①荷重に耐えて②バネの力で進む

トップアスリートが走る時、ブレードには500kgほどの荷重がかかるようです。体重70kgとしたら7倍ほどの荷重がかかる計算ですね。一般人でも2~3倍の荷重がかかるらしいので、やっぱりアスリートにはとんでもない負荷がかかるんですね〜

ブレードは500kgの荷重をかけても壊れない高い強度を持ち、変形しても元の形に復元するバネのような力、高い弾性を持っています。この大事な高強度・高弾性の2つの役割を実現する素材がCFRPなんですね。CFRPは髪の毛の太さの1/10、鉄に対して強度は10倍、弾性は7倍というスーパー素材で、義足に限らず、軽量化と強度を両立すべくF1をはじめとするレースカー、競技用自転車、飛行機などあらゆる分野で利用されていますよね。

CFRPはシート状になっていて、ブレードの場合にはシートを60枚ほど積層して作っています。この積層も全部職人さんによる手作業ですが、ただ積層しているわけではありません。CFRPは繊維方向には鉄の10倍の強度を発揮できるんですけど、それ以外の方向ではその力を十分に発揮することができないんですね。そこで重要なのが、ブレードにかかる荷重に応じて、積層の段階でシートの繊維方向を変えているんです。ここがまさしく職人技!すごいっす!このようにして高強度・高弾性のブレードが製作されますが、その能力を使い切るために必要なのがブレードの形状。横から見ると丸みを持った複雑な曲線の組み合わせで形作られていてかなり緻密に設計されているのが分かりますよね。この丸みによって、ブレードのバネとしての力を無駄なく使えるようにしているんだとか。そのための一つの解決方法として『土踏まず』をつけたんだとか。アイデアはもちろんすごいんだけども、さらにそれを計測する技術もすごいものがありそうですね〜

個々のアスリートへの最適ブレードの選定!なんと81種類から最速タイム仕様を選び出す!

日本人パラアスリートが使用するブレードは、海外製品が多く使われてきていたようです。海外製品は体格の立派な外国人向けに作られているため大きくて硬いようです。番組で紹介されたブレードは日本製で、ブレードを4つの要素(ブレード高さ、かかとの長さ、つま先の長さ、硬さ)に分け、それぞれの要素をさらに3段階に分けていました。こうすることで 3x3x3x3=81 種類のブレード仕様を設定でき、そのうちの9種類を実際に作って選手に試してもらい、体の動きや速度を計測。この9種類の計測データを使ってコンピュータシミュレーションモデルのチューニングを行うことで81種類全てのブレードの性能を計算し、最速タイムをたたき出すブレード仕様を選定したとのこと。この最速仕様を実際に選手に履いてもらったところ、慣れるまではかなり苦労したものの最終的には自己ベストを記録できたんだと。

これの何がすごいことかというと、選手個人個人の体格や障害の度合い、走り方のクセを含めて最適カスタマイズができるということ。今後、シミュレーションの精度がさらに上がってくれば、モデルチューニングのために必要な実物製作の種類を減らしたり、3段階ではなくもっと細かい調整ができるようになるんでしょうね。このシミュレーション技術は高齢者の歩行支援機器や健常者の日常の靴などへの応用が期待できるとのこと。パラスポーツを支える技術進化から目が離せませんね!


競技用車いすでパラスポーツアスリートを支える!最新テクノロジーをサイエンスゼロで解説🎶

ラグビー、バスケットボール、テニス、トラック競技など、車いすはそれぞれのスポーツに特化した形に設計されているんですね。ラグビー用は強烈なタックルに耐えるように頑丈に、テニス用は小回りがきくように、トラック競技用はスピードを出せるように。

トラック用車いすにおけるテクノロジーとしては車体をCFRPとアラミド繊維を組み合わせて製作。アラミド繊維を加えることで、地面からの振動吸収性を向上でき、車いすのふらつきや操作性低下を抑えられ、走行が安定するようになるんだとか。実測でもその効果は確認できて、25%もの振動低減ができたんだということです。

また、車体と車輪の間に入れるボールベアリングのわずかな「ガタ」大小もタイムに影響を与えるんだとか。選手のフィーリングにも影響を与える要素でもあるようで、どちらのガタ仕様が選手にフィットするか実走テストを行なっています。ガタの大きい方を選んでいましたが、ここで大事なのが選手とエンジニアのコミュニケーション。お互いがお互いの言っていることを理解できるために必要な共通言語を持てているかということなんだとか。確かに、選手が言うフィーリング的なことをエンジニアは数値に変換しなければならないですし、その逆もまたしかりですもんね。


サイエンスゼロ〜放送内容(ほぼ)全文🎶

驚異的な跳躍。圧巻のスピード。パラスポーツ選手の活躍を支えるのが義足や車いすなどの競技用具です。今日本でもメーカーや研究機関でその開発が急速に進んでいます。

記録を劇的に向上させたカーボン製の義足。走りやすさを追求します。

”選手の人体の一部になる”っていうのが開発している我々にとって理想の姿ですよね。(スポーツ用義足開発担当者 宮田美文さん:ミズノ)

そして競技の特性に合わせて進化を続ける車いす。中には激しいぶつかり合いを制するためのものも。トップアスリートの車いすが一つとして同じものはありません。その開発現場には選手の思いを技術の力で形にしようと奮闘するエンジニアたちの姿がありました。パラスポーツを新たな時代へと導いた競技用具の進化。その最前線に迫ります。

2020年には日本にも東京パラリンピックがきますから。その時にこの道具のことをわかっているとより見方が広く深くなるかもしれませんね。
そうですよね。今日はですねそのパラスポーツを支えるテクノロジーの真髄に迫ってきたいと思います。早速専門家をご紹介したいと思います。保原浩明さん(産業技術総合研究所 主任研究員:競技用義足を研究)です。よろしくお願いします。

まずは今日このようにご用意しました義足について教えて頂きたいんですけれども。
お願いいたします。
こちらが歩く用の義足になります。
ここが膝ですか?
ここが膝になります。そしてここから下の部分が足部(そくぶ)と呼ばれるものです。こちらにあるのがスポーツをする時に使われる義足です。一番違うのはこの黒い部分になります。ブレード(板バネ足部)ですね。
これはブレード。ちょっと持ってみてもいいですか?
どうぞ。
あっ、軽いですね。
そうですね。
テレビでよく見る、なんて言うんですか。びよーんってなってるじゃないですか。もう全く曲がるような気がしないですね。

硬いんですね。大丈夫ですか?
でもほとんどたわみませんね。
まったく動かないですね。
このブレードの部分の進化が一番大きいですか。
大きいですね。
そこでですね、小島さんに見て頂きたいのがこちらの数字なんですね。0.99秒。これ義足を使った陸上競技の記録にまつわる数字なんですけれども、何の数字だか想像つきますか?
陸上競技の記録でこの数字は出ないですよ。幅跳びの選手が空中にいる時間?
実はこれ男子100m走の世界記録を持っているウサイン・ボルト選手と義足ランナーで一番速く走る選手の100m走の差です。ちょうど今1秒を切っています。
え〜?ここまで近づいてきたんですね。

脅威のスピードを支えるカーボン製の義足。その開発現場に潜入しました。
こちらはブレードに荷重をかける強度テスト。さあどんどん力をかけていきます。

うわーすごい。折れそうで怖い。

このブレード最大500 kg 近い負荷をかけても壊れない高い強度を誇っています。しかも変形してもきちんと元の形に復元するバネのような力、高い弾性があります。
人は走るとき地面を強く踏み込みます。この力は一般人でも体重のおよそ2倍から3倍。足はその力を支えつつ、筋肉などのバネで押し返すことで前へと進んでいきます。
トップアスリートが使うブレードは、500kgに近い荷重に耐えながら、力強いバネとして推進力を生み出しているのです。この大事な二つの役割を実現する素材こそCFRP、カーボン繊維強化プラスチックです。
こちらがカーボン繊維。髪の毛の1/10のという細さ。強度は鉄のおよそ10倍、弾性はおよそ7倍というスーパー素材なんです。

炭素には高い強度の物質を作る性質があります。その代表はダイヤモンド。しかしカーボン繊維は硬いだけではありません。

炭素が規則正しく並ぶとダイヤモンドのように非常に強い構造になります。一方カーボン繊維は製造過程で程よい隙間ができるように設計されています。この適度な隙間がしなやかさをもたらすのです。炭素繊維を一つの方向に揃えてぎっしり並べたシートを重ねてブレードは作られます。さて、一本のブレードに一体何層ぐらい重なっているかというと、答えは60層以上。
たくさんのシートを重ねるのには重要な意味があります。今一度に5本のブレード作り始めました。シートを重ねる作業はなんと全て手作業で行われています。そして重ねるシートよく見ると、繊維の方向の向きが違いますね。そう繊維の方向が違う4種類のシートを、組み合わせて作っているんです。

このシート、繊維の方向には鉄の10倍という本来の強度を発揮することができますが、横方向に引っ張るとこの通り、簡単にバラバラになってしまいます。こちらは縦横両方に繊維を織り込んだもの。 バランスよく強さを発揮しますが、使いすぎると分厚く重くなってしまいます。 そこでシートの組み合わせが大切なんです。

(走るときブレードには)こういうふうに力がかかります。その時に主に必要な繊維の方向はこの向きですね。ですけどこの向きだけですととてもねじれやすかったり、割れてきたりという懸念もありますし、この部分は斜めの繊維が必要だなとかっていうことで配置を決めてます。

60枚のシートの重ね方によって出来上がるブレードの性能は大きく変わります。まさに職人技なのです。
もう一つ重要なのかブレードの形状にどのような丸みを持たせるか、その設計です。
この丸みがないとバネとして働かないただの棒になってしまい、強い推進力が生まれません。この形状の開発も年々進化を遂げています。
ほんのわずかな改良が大きな差を生むといいます。こちらは開発当初のプレートの実験結果です。ブレードが大きくたわみ、つま先から離れた位置まで地面に着いてしまっています。バネとして機能するはずだった曲線部分が潰れてしまい、義足はただの棒のようになってしまうのです。
それを解決するために、宮田さん達が考え出したのが土踏まずをつけることでした。

ここにアーチ状の土踏まずがあって、どんどん押していっても 着く位置はずっとここです。ずっとこの範囲は一定のバネの硬さを保つことになります。

土ふまずを設けたプレートの実験結果です。地面と一点で接地し続けていることで、常に曲線が保たれてバネとしての機能が失われないようになっています。
アスリートの力を最大限引き出すため、日々努力が続けられています。

”選手の人体の一部になる”っていうのが開発してる我々にとって理想の姿ですよね。

う〜ん。土踏まずができることによって力がそのまんまバネになってましたね。すごい。ここが大事なんですね。
これ、かなりもう理想型に近づいたというふうに見ていいんでしょうか?
・・と思いたいところなんですが、実はまだまだやらなければいけないことがあります。というのも例えば人それぞれによって身体のサイズや障害の度合いが違いますよね。また走り方にも一人ひとりクセがあると思います。そういった人達にとって一体どんな形の義足が最も適しているのか、それを今研究しています。
こちらちょっとご覧下さい。どんな義足がそのアスリートに最も合うのか、コンピュータ上でシミュレーションする仕組みを作ったんですよね。

保原さん達の研究グループはブレードの高さ、かかとの長さ、つま先の長さ、硬さ、の4つの要素をそれぞれ3段階に分けました。すると全部で81種類のブレードが生まれます。そのうち9本を実際に選手に履いてもらい、体の動きや速度を計測。その後コンピューター上で走りを再現することで残りの72本も含めて最も合うブレードを探しました。

コンピューターのアスリートは疲れませんので、いつも同じように走ってくれるので、どのブレードがそのアスリートにとって最もいい、速く走る上で大事かを調べることができます。
そうか。そういうテクノロジーの使われ方もしているんですね。
これ調査のシミュレーションの結果があるんですね。
はい。これは 1本目から81本履かせた場合の記録の違いなんです。
もしコンピューター上のパラアスリートが100m走を走ったと仮定した場合にタイムはいったい何秒になるのか。つまりそのこのグラフ低い方がいいタイムってことですね。見てみるとオレンジ色です。76番目の形。これが最も早く走れた義足だったと。そしてその76番目の義足を実際に作ったのか今小島さんの目の前にあるこれです。
これですか。これがコンピューター上で81回走らせた結果が一番速かったものなんですね。
さっきのグラフを見ると、本当にブレードによって1秒以上の開きありましたよね。
ありますね。
これを履いて走ったアスリートはどういう受け止め方だったんでしょうか?
実は最初は非常に苦労しました。それまで履いていた義足の方が良かったとかですね。そういういろんな評価があるんですけれども、だんだんこれに慣れてきて、使いこなし方もだんだん覚えてきて、夏の大会では自己ベスト記録を出して。

ほんとにスポーツってこの我慢と闘いなんですね。
その選手が以前使っていたものとはかなり違うんですか?
そうですね。実際に比較してみましょう。こちら青いソールが付いてるもの。これが外国のものになるんですが、大きさが違いますよね。この高さがだいぶ違うと思います。あと硬さもですね。かなり硬くはなっています。日本人の小柄な選手が外国人と同じ義足をつけて同じような走り方で速く走れるかというと、これはだいぶ違うんじゃないかなってこいうとは言われてたんですが。やはり小振りになってコンパクトになったと。多分それは日本人の平均的な体型から見ると非常に良いことなんではないかなと。
これぐらいコンパクトの方がいいんですね。
そうですね。
今回のシュミレーションというのは他のことにも応用が可能でしょうか?
はい応用可能だと思います。例えば高齢者の方の歩行支援機器であったり、私達が日常で履いてる靴であったり。こういうような技術を使って解くことができると、実はパラスポーツは一つの入り口であって、将来的な様々な個別の形を見つけていく作業になるじゃないかなと。
そうなんですね。すごい。この技術をパラスポーツだけではなくて健常者の人も技術を借りるところが来るんですね。



さあ続いては、車いすの話題です。これだけスタジオにもご用意しましたけれども、車いすについて教えていただくのは、花岡伸和さん(日本パラ陸上競技連盟 副理事長)です。よろしくお願いします。
花岡さんは陸上競技で活躍されて今も指導者をされていらっしゃるんです。
私ホノルルマラソンを走ったことがあるんですが、ちょうど10 km とかぐらいの時にもう選手が折り返してきて前から来てすっごいカッコよかったです。
ありがとうございます。
それに使われているのがこの車椅子ということですけども。
前輪がすごく大きく前に出てますよね。
どうしても車いすをこぐ時に力を加えると前輪がパカパカ浮いてしまうんですよ。ウィリーしてしまうので、どんどんに前輪が長くなって安定性を求めるようになったっていう流れですね。
今日は他の競技に使う車椅子もご用意しました。いくつかあります。小島さんにはそれぞれどんなスポーツに使われているのかちょっと当てていただきたいんですが。
まずこちら。かなり印象が違いますよね。
これだけ分かるぞ〜
何となく何するか分かりますよね。
ラグビー。
正解です。
ガンガンぶつかるんで。タックルの傷跡が。
ちょっと小さい戦車ですよね。
そうですね。アルミの板で装甲を作ってますけど、それでもボコボコになりますからね。
すごいですね。どれだけ激しいか伺えますね。車いすからも。

そしてこちらは何でしょうか?
5輪?
そうですね。こういう風に簡単に回るようになってて。
すごく小回りが利いてましたね。小回りが利くスポーツ。
いい着目点ですね。
本当ですか。
日本選手かなり世界でも活躍してますよね。
そうですね。男子女子ともに強いですね。
あっ、テニスだ。車いすテニス。
正解です。
とっても有名ですもんね。
これ実は後ろに補助輪が付いているんですね。テニスでサーブを打つ時に反り返っても転倒しないようになっているということなんですね。
ああそういうことだったんだね。
更にテニスコートの中を本当に早く動き回るためにこうやって小回りが利くようにもなっていると。

そして一番端のものはこれは何でしょうか?
座面の高さがラグビーと比べてとても高いですね。ボールの競り合いとかでどうしても高さが必要になるから。バスケだ。車いすバスケットボール。
正解です。
バスケットボール、健常者のスポーツと同じで、コートの広さもゴールの高さも同じだということなんですよね。
座面が本当にラグビーと比べて全然違いますもんね。

それぞれのスポーツに本当に特化した車いすになっているんですよね。これ、どういった素材でできてるんでしょうか?

ここに並んでいるものは全てアルミニウムでできています。
アルミですか。
最近なんですけれども軽さが必要なテニス用に関してはマグネシウムという金属。アルミニウムよりさらに軽さが追求できる金属を使ったりしてます。

テニス用車いすに乗ってみました。
ではその場で回転してみてください。
回転。逆に回せばいいのか。うわ〜!気持ちいい!
これタイヤが傾いているのはタイヤの接地面と体の軸が離れていれば離れているほど、てこの原理で軽い力で回転できるということなんです。
でも こう・・・体の軸がぶれないですよね。回っても。
選手はラケット片手に全力疾走ですからね。
あれ?どうするんだ?
大体選手は回りながらパコーント打ってるんですよ。
あ〜そうだ!
それで止まる。その場で止まるっていうことなんですね。
動き続ける感じですかね。
はあ〜。

さあ、競技用車いすのテクノロジーに更に迫っていきましょう!
無駄のないフォルム。登場して間もない最新の陸上競技用車いすです。独特の車体にはこの会社が手掛けてきたF1カーやジェット機の技術が活かされています。素材はスポーツ用義足にも登場したCFRP。さらに車いす独自の工夫もがあります。それは・・・

我々は地面からの振動を吸収させるためにカーボンだけではなくてアラミド繊維を使っています。

アラミド繊維はナイロン系の繊維の一つで、強い粘りを持ち振動を吸収してくれる性質があるためタイヤの補強材などに使われています。地面からの振動は車いすのふらつきや操作性の低下につながるため、いかに抑えるかがカギになります。振動を吸収してくるアラミド繊維とCFRPを組み合わせることで、より走行が安定する車いすを目指しました。実際に車いすに伝わる振動を測ってみると、振動を従来より25%抑えることに成功しました。

選手の持っている力をそのまま引き出すのではなくて、120%の力がこのレーサーで発揮できるように取り組んでいきたいと思っております。

アスリートを支える技術的工夫は車いすの車輪にも詰め込まれています。このメーカー(OXエンジニアリング)が注目したのはある部品。

車輪の中央についているこの部分ですね。ここにベアリングが付いているんですけども。

回転時の摩擦を小さくするためのベアリング。車体とつながる内輪、車輪とつながる外輪の間にボールが挟まった構造をしています。ベアリングは車いすのスピードに直結する重要な役割を持ちますが、ただ回りやすいものを作れば良いというわけではありません。

モーターで回しているわけじゃなくて人力で回しているのでそこら辺は選手が細かく感じとるんですよね。選手が納得できるものがどういったものか探してるところです。(競技用車いす 開発担当者 小澤 徹さん)

この日小澤さんは自社の車いすを愛用してくれている選手達に開発中のベアリングの走行テストを頼んでいました。

参加してくれたのは日本記録を持つトップアスリート、樋口政幸選手(トラック1500m、5000m日本記録保持者)そして鈴木朋樹選手(トラック400m、800m日本記録保持者)です。今回は2種類のベアリングを試します。

少しガタがあるものと全くガタが無いものと、どちらがいいかっていうのを実際に走っていただいて調べたいと思います。

ガタとはベアリングに設ける遊びのこと。こちらは遊びが少ないベアリング。ボールにかかる力が大きいため回り始めは重いものの、力が逃げにくくトップスピードが伸びやすくなります。逆に遊びが大きいと回り始めが軽く、スタートダッシュがかけやすくなりますが、力は少し逃げやすくなります。どちらが走りやすいと感じるか、選手たちの意見を聞いて開発の方向性を決めようとしています。

ガタがないやつとガタがあるやつで比べた時には、ガタがあるこっちの方がゼロからの出だしは良いかなって感じでしたけどね。

好みもあるんですけど、(こぐとき)硬いと柔らかいとか個人的にはキャッチ(こぐ感触)はソフトな感触の方が好きなんで。

この日反応が良かったのは、遊びのあるペアリング。改良を続けることになりました。

選手としてはフィーリングっていうか、感じたものを感じたままに伝えるしかないのでエンジニアの方がうまく噛み砕いてくれて形にしてくれるって事なので、二人三脚っていう本当にそういうところですね。

どっちが良いというのが感覚的に分かったので方向性はきちんと出る思います。

一秒でも速く。小さなベアリングに大きな期待がかかります。




すごいですね。すごく辛抱強く選手の意見も捉えて。
そうですね。
それによってこれから開発を変えてってくださる。真摯に向き合ってくださる技術者の方に支えられているんですね。
やはりその時に共通言語を持てているかというのがすごく大事だと思うんですよ。選手の言ってることを作り手が理解しなければいけないし、作り手か言ってることもやはり選手が理解する必要がありますから。

技術者の方々の熱意によってもこの車いす、かなり進化を遂げているんですけれども。それがわかる写真がこちらなんですね。昔の車いす競技はこんな感じで一般的な車いすとほとんど変わらない形で皆さん参加していたんですね。
これでも実は車いすマラソンが始まった時よりも進化しているくらいですね。
かなり急速に進化してきたっていうことがいえそうですね。
そうですね。

義足に関してもこれだけの変化っていうのはやっぱり遂げているんでしょうか。
そうですね。1980年代の半ばにこういうCFRPを使った義足が作られてからは競技記録は飛躍的に伸びましたね。もちろんアスリートの頑張りも当然あるとは思うんですけれども、やはりそのぐらい道具の貢献度っていうのが大きいのがパラスポーツの特徴なのかもしれませんね。これはもっともっとこの競技性が高まっていった場合に健常者と呼ばれる集団をしのぐようなアスリートが出てくるかもしれない。ただそこから先ちょっと待ってよと。「これはテクノロジードーピングなんではないか」こういった議論もこれから出てくるんではないかなと思います。

その技術の革新が進むところまで進んだから出てきた議論ですよね。
その一方で現状で、例えばメガネをルール上の制約にしているスポーツっていうのはほとんどないと思うんですよね。ただよくよく考えてみると、実はそういう要素はなくはないという。ただそうなっていくと、じゃあ義足はどうなんだ、車いすはどうなんだ、とかっていうと、実は明確な線引きはなかなかできないという。
眼鏡も自分の体の力じゃない。道具の力を借りてますもんね。
そうですね。そうなっていった時に、本当の公平性ってなんだろうかっていうのを一つ考えるきっかけになれば面白いですね。
道具の良さによって結果にそのまま直結してしまうのも貧しい国だったりとか、なかなか良い素材が手に入らない地域の国からすると、どうなのかなってところがあるんですが、その辺どういうふうにお考えですか?

おっしゃる通りなんですよ。道具が良くなっていくというのはものすごく大事なことだし、必要なことだ思うんですけども、そういったものを本当に世界中の人が手に入れられるかっていうとそうじゃない。そこでやはり不公平だという話はずっとつきまとうんじゃないかなという気はします。ただ、道具を良くしていく技術の革新、開発っていうのはやめてはいけないと思いますね。例えばF1カーの技術が乗用車に活きるような、車いすでいうとレース用の車いすの技術が生活用車いすに生かされて普通の生活が良くなっていく。それでみんながハッピーなるって方向に行ってくれると嬉しいなと思いますね。

特に小さいお子さんなんかは体育の授業見学したり、なかなかスポーツが普及しきれないと。そういった部分で技術がまだまだ進化していけば、そこに切り込めるんじゃないかなという可能性はあると思います。

テニスの車いすに乗って感動したんですよ。すごく楽しくて。これで、あのテニスコートで、広さも変わらないじゃないですか。普通のテニスと。それはすごいな、かっこいいなって純粋に感じ取れたんですよね。

そうですよね。初めての体験でドキドキワクワクっていう、それがテニス用の車いすに乗った時に感じたことやと思うんですよね。そこからできないができるに変わっていくっていうことをパラスポーツってのは発信してると思うんですよね。
そうですよね。私たちには来年それを生で見るチャンスが幸運なことに待ってますからね。
そうですよね。
お二人今日はどうもありがとうございました。
ありがとうございました。



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