こんにちは。
NHK Eテレで放送している『サイエンスZERO』。毎回毎回いま話題の最先端の科学と技術をとっても分かりやすく解説してくれるので、ワタクシの大好きな番組でもあります。今回は、2020年4月12日放送の「未開の境地!“聞こえない音”の最新技術」ご紹介します!
テーマは“聞こえない音”。ヒトの可聴域は20ヘルツから2万ヘルツとされるが、個人差が大きく、可聴域内でも聞こえなかったり、可聴域外でも聞こえたりする場合がある。いま“聞こえない音”の最新技術が、情報セキュリティ、エンターテインメント、災害予知などさまざまな分野に活用され始めた。一方で、多くの人には聞こえないがゆえに、これまで見過ごされてきた音の課題も浮かび上がる。知られざる「音の最前線」に迫る。
サイエンスZERO〜放送日と出演者
【放送日】2020年4月12日
【司 会】小島瑠璃子、森田洋平
【ゲスト】長岡工業高等専門学校准教授…矢野昌平,神奈川工科大学准教授…上田麻理
【語 り】利根川真也
【放 送】 毎週日曜 [Eテレ] 午後11時30分~0時
【再放送】 翌週土曜 [Eテレ] 午前11時~11時30分
音の分類はどうなってる?聞こえる音と聞こえない音、さらにヒトと動物での違いは?
“聞こえない音”っていうのはどんな音?
耳に聞こえる音を可聴音といい、このときの周波数の範囲(可聴域という)はヒトの場合で20~20,000ヘルツ(Hz)といわれています。音というのは空気の振動によって伝わるもの。20Hzの周波数の音というのは、空気が1秒間に20回振動している音ということ。20,000Hzは20,000回ということです。周波数の数字が大きいほど高い音に聞こえるんです。
ヒトに「聞こえない音」とは、20,000ヘルツより高い周波数の超音波と、20ヘルツより低い周波数の超低周波音に分類できます。可視光、紫外線、赤外線といった光の分類と似たところがありますね。
動物ごとの可聴域の比較
では聞こえる音の周波数帯はどうなっているんでしょうか?
ヒト 20 〜 20,000Hz
象 5 〜 12,000Hz
犬 15 〜 50,000Hz
猫 60 〜 65,000Hz
イルカ 150 〜 150,000Hz
一般的にはこのように表現されていますけど、小学生の子どもたちのなかには32,000Hzの高周波音を聞き分けちゃう子もいたりするので個人差があるようです。また、加齢により高い音が聴こえにくくなってくるんです。たしかに・・・
サイエンスZEROでご紹介!“聞こえない音”の最新技術!
詳しく解説してくれたのはゲストの矢野さん。矢野さんも長岡工業高等専門学校で“聞こえない音”を利用した新しいシステムを開発しているとのこと。
“聞こえない音”の最新技術!情報セキュリティー分野への活用!耳音響認証でプライバシーを守る!
スマホのセキュリティーの仕組みに、顔認証や指紋認証があります。皆さんも毎日当たり前のように利用していますよね。顔や指紋が個人特有であることから、それを個人認証の鍵として利用しているんですね。同じように、耳の中の形も個人個人違うんだとか。矢野さんはこの耳の特徴を利用した耳音響認証システムを開発しています。
まずイヤホンを装着します。イヤホンからは認証のための特殊な音波が発せられ、この音の反響音を捉えるんだとか。耳の形の違いによって、この反響音が人それぞれ違うものになることを利用して認証者を選別できるんだそう。研究を始めてまだ3年にも関わらず、99%の精度を実現しているなんて、目の付け所が素晴らしい研究なんでしょうね。
驚異的だったのが、双子ちゃんを使った実験です。顔認証はまったく役に立ちませんが、耳認証だと選別できるんですよ!ただ、まだ課題があることも事実で、耳の形も双子ちゃんは似ているらしく選別できる打率は2割ほど。5回中4回まで見破れなかったらしいです。精度99%ではまだまだ足らないということなんでしょうね。今後の進化に期待したい技術です。
“聞こえない音”の最新技術!ライブエンターテイメント分野への活用!字幕メガネ!
すでに劇団四季の舞台で実用されているシステムです。舞台役者のセリフが字幕でメガネに表示されるシステム。舞台のシーンに合わせて字幕が表示され、外国人や聴覚障害者の方への利用が進められているそうです。
こちらの映像は、実際にメガネをかけたとき、どんなふうに表示されるかわかりやすいですね。
#字幕グラス #劇団四季【ABCニュース】
セリフや字幕が空中に 劇団四季が多言語「字幕メガネ」サービス開始 https://t.co/InqSAHlZDI— 政所ぴぴ@観劇blogger (@pipitan_pipipip) November 27, 2019
シーンに応じた字幕切り替えに18,000〜20,000Hzの高い音が利用されているんだとか。この高い音を字幕メガネのマイクが拾うことで画面切り替えのスイッチになってんだって。スイッチとして音を使うという発想は良いことずくめらしい。既存設備のスピーカーがそのまま使えるんで設備投資いらないとか、電波みたいに混線しないとか。考えた人アッタマ良いですよね。
“聞こえない音”の最新技術!災害予測分野への活用!インフラサウンドを捉えて竜巻発生予測!
年間100個以上の竜巻が発生するアメリカ・オクラホマ州。数千億円もの被害が出る多発地帯です。竜巻警報の精度が25〜30%程度と低いことが影響しているとのこと。この予測精度の低さを克服するのに人間には聞こえない20Hz以下の低周波音、竜巻が地上に届く前に発するインフラサウンドを活用しようとする取り組みが行われているんだそう。開発を進めるのはオクラホマ州立大学のブライアン・エルビング博士。四方に長いアンテナを伸ばした特別なマイクを使うことで竜巻が発生する前、上空の積乱雲に発生した渦が発するインフラサウドを捉えるといいます。2017年5月にはこの特別なマイクでインフラサウンドを捉え、その4分後に竜巻が発生したんだそうです。
高知県の高知工科大学が南海トラフ巨大地震による津波被害を軽減するため、津波が出すインフラサウンドを捉える研究を進めているそうです。精度の高い津波警報が早期に出せるようになることで、日本だけじゃなく世界中で役に立つ技術になりそうですね。
サイエンスZEROでご紹介!“聞こえない音”だからこその課題!
人の可聴域外にある“聞こえない音”を活用した新技術が生活を便利にする一方で、聞こえない音による騒音が問題になってきているといいます。
番組冒頭で紹介された農村に設置された野生動物除けのシステム。イノシシとかタヌキが近づくと人には聞こえない20,000Hzの超音波を大音量で鳴らしているそうな。この音が聞こえる動物たちはびっくりして逃げるんだそう。同様の仕組みで、イギリスの保育園に設置された猫の撃退器が発する音のせいで子たちが体調を崩すという事例もある。子どもや若い人たちは実は20,000Hzと言われる可聴域を超える高周波音が聞こえていて、ものすごい騒音を感じているんだとか。オートバイのブレーキ音、図書館のゲート、猫・ネズミ撃退器などなど。
やっかいなのは、加齢に伴いこれら高周波の音が聞こえなくなるので、子ども・若もの苦しみに大人たちが気づけないということ。“聞こえない音”の大騒音だけにやっかいです。
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