サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)最新情報をご紹介!初観測の舞台裏とマルチメッセンジャー天文学

サイエンスZERO

こんにちは。

NHK Eテレで放送している『サイエンスZERO』。毎回毎回いま話題の最先端の科学と技術をとっても分かりやすく解説してくれるので、ワタクシの大好きな番組でもあります。

今回は、2020年8月9日放送の「ついに稼働KAGRA 初観測の舞台裏」ご紹介します!

専門的で難しそうなことは、国立天文台准教授の麻生(あそう)洋一先生が分かりやすく解説してくれます!麻生さんはKAGRAの光学機器設計と防震装置組み立ての責任者とのこと。超精密機器でもあるKAGRAを手なづける苦労話をとっても楽しそうに語ってくれました!

アインシュタインが予言した「重力波」の観測が実現し、天文学が一大転換点を迎えている。世界中の望遠鏡が一斉に動き、たった1つの天体現象を多角的に捉える「マルチメッセンジャー天文学」が始まったのだ。その要となるべく、日本の重力波望遠鏡KAGRAがついに稼働した。初観測の舞台裏へ潜入!人類が持つ技術の粋を極めた巨大施設は、驚きと興奮に満ちていた。4億5千万光年の彼方を目指す研究者たちの情熱を伝える。

サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)の最新情報をご紹介!放送日と出演者は?

【放送日】2020年8月9日

【司 会】小島瑠璃子、森田洋平
【ゲスト】国立天文台重力波プロジェクト 准教授…麻生洋一
【語 り】川野剛稔

【放 送】 毎週日曜 [Eテレ] 午後11時30分~0時
【再放送】 翌週土曜 [Eテレ] 午前11時~11時30分



サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)の最新情報をご紹介!KAGRAとマルチメッセンジャー天文学のおさらい🎶

マルチメッセンジャー天文学のおさらい

マルチメッセンジャー天文学とは、

天体現象によって発生する電磁波、宇宙線やニュートリノなどの粒子および重力波、を情報を運ぶ運び手(メッセンジャー)と見立てて、複数のメッセンジャーを用いて天体現象を総合的に解明する天文学のこと。

〜天文学辞典:公益社団法人 日本天文学会

ブラックホール同士の合体、超新星爆発、中性子星同士の合体の際に、光や電波が届くよりもちょいと前に、ニュートリノや重力波が先にやってくるんだとか。

ニュートリノを捉えるのがスーパーカミオカンデ、重力波を捉えるのが重力波望遠鏡KAGRA。

重力波望遠鏡は、日本のKAGRA、イタリアのVirgo、アメリカの2基のLIGO の合計4基が世界で稼働しています。

複数の重力波望遠鏡で同時に重力波を捉えることで、広い宇宙のどの方向で巨大な天体現象が起きているのかをピンポイントで特定することができるようになるんだとか。

重力波によって特定された方向に向けて一斉に世界中の望遠鏡を向けることができるため、いろいろな情報を捉えることができるようになるんですね〜

サイエンスZEROで紹介されたマルチメッセンジャー天文学についてはこちらもご覧ください。もうちょいと詳しく解説してます。

サイエンスZEROで オリオン座のベテルギウスをご紹介!超新星爆発とマルチメッセンジャー天文学

サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)を紹介!マルチメッセンジャー天文学の幕開け!


重力波望遠鏡KAGRAのおさらい

世界で4基目の重力波望遠鏡として建造されたのがKAGRA(かぐら)。岐阜県飛騨山中の地下深くにあります。

サイエンスZEROでは2019年10月に本格稼働前のKAGRAを紹介していました。KAGRAがどんなものなのか、どんな最新技術が注ぎ込まれているのか、まずはこちらをご覧くださいませ。

サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)を紹介!マルチメッセンジャー天文学の幕開け!

KAGRAが捉える重力波。あのアインシュタインがおよそ100年前にその存在を予測したものです。

観測できる程度の重力波は、ブラックホールの合体や中性子星の合体、超新星爆発などの宇宙のビッグイベントの時のもの。

そんなビッグイベントでも観測できる重力波による空間のゆがみはほんのわずかなんだとか。

なんと、最も小さい原子である水素原子の1億分の1!

まったくイメージわかないですよね〜

でも、この極小のゆがみをちゃんと検出するためにはわずかな振動も大きな障害になっちゃうんです。世界最高精度の観測を実現するために、この振動を排除するいろいろな配慮が施されているんです!

  • 地表からの振動を減らすため、観測装置全体を地下200メートルの固い岩盤をくり貫いた地下に建設
  • 人の歩く振動を排除するため、観測装置本体から5キロメートル離れた場所にコントロールルームを設置
  • 3キロメートル先でレーザーを反射する人口サファイア製の鏡表面の熱振動を抑えるため、-253℃に冷却
  • 人口サファイア鏡を地震などの揺れから守るための特別な防振装置の設置



サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)の最新情報をご紹介!KAGRAの目指す測定性能は4億5千万光年!

KAGRAが検出する重力波の距離は設計上は4億5千万光年。

本格稼働したばかりのKAGRAのひとまずの最低ラインとしての目標は300万光年先の中性子星合体を検出できることと定めていたんだとか。

この300万光年という距離、具体的にはわたしたちのいる天の川銀河のお隣にあるアンドロメダ銀河(250万光年)のちょいと先までカバーできる距離なんだとか。

イスカンダルまで16万光年なので、アンドロメダ星雲自体もかなりでっかい銀河なんですね。

KAGRAの設計性能が発揮されると、アンドロメダ銀河だけでなく、はるかかなたの銀河の集まりである銀河団もその計測範囲に収めることができるようになるんで、桁違いの情報量を得ることができるようになるんだとか。

麻生さんが分かりやすい例えを言っていました。300万光年の距離で得られる情報の1000万倍の情報を得ることができる。つまり、300万光年の測定範囲で1000万年に1回に発生するような規模のレアな天体事象(超新星爆発とかブラックホール合体とか)が、4億5千万光年まで延びることで毎年観測できるようになるってこと。

これならかなりの頻度で観測できそうな感じしますよね!


サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)の最新情報をご紹介!最高性能を引き出すためのノイズハンティング!

「音」によるノイズをハント!

KAGRAに本体に隣接する空調ファンやコンプレッサーなどの設備機器が発する音に着目。

音は空気の振動であり、この微小な振動が重力波観測機器に悪影響を与える場合があるんだとか。

KAGRAの中にあるあらゆるものにマイクを向け、ノイズの原因となる音を探して潰すという作業を繰り返すんだとか。

「外」からやってくるノイズをハント!

地下200メートルの固い岩盤をくり貫いた上に設置されたKAGRAではありますが、その岩盤そのものを揺らすやつらが地震と日本海の荒波。

地震は分かりやすいですが、KAGRAに備えられている特殊な防振装置と補正装置のおかげでやっつけることができているようです。

驚いたのが海の波の影響。岐阜県飛騨山中の地下深くに設置されているのに、50キロメートルも離れている日本海が荒れると波の影響でKAGRAにノイズが出てしまうんだとか。

これを補正するために地震計を設置し、計測結果によってレーザーを反射するサファイア鏡の位置を補正する制御を取り入れているんだとか。

自然相手はなかなかに大変ですね〜

「想定外」のノイズをハント!

レーザーそのものには問題がなかっのに、レーザーを遮断する安全装置をつけたことで想定外のノイズがレーザーに乗るようになってしまったんだとか。これ全く想定していなかったノイズなんだそう。

原因特定にはものすごい時間がかかったようです。

安全装置のシャッターを駆動する電磁石が、レーザーによって温められてしまった結果、レーザーの通り道に空気の揺らぎが発生してしまったんだとか。当然目で見てわかるようなゆらぎではないそう。

想定外の出来事ではあるけど、新しいものを開発する際にはよくあること。それでもそれを一つ一つ解決していくのは研究者としては醍醐味でしょうね。大変でしょうけど・・・

人口サファイア鏡の極限冷却で「熱」のノイズをハント!

反射鏡表面の熱振動を抑えるために、-253℃の極低温まで鏡を冷却しています。KAGRAのレーザーの通り道は真空になっていて、鏡もその中にあります。

今回の初期稼働では真空度が少し不足したため、鏡表面に霜がついてしまうという事象が起こったそうです。そのため設計温度の-253℃まで冷却ができなかったため、ちょっと高い温度での運用となったそうです。

300万光年の計測ではこれでもクリアできたので今回は支障がでなかったようですが、4億5千万光年を目指すには極限までの性能発揮が必要なため、課題解決に向けて調整しているとのこと。

きっと原因特定と対策まで検討が進んでいるんでしょうね。次がどこまで届くのか楽しみですね!



サイエンスZEROで重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)の最新情報をご紹介!やっぱりあった新型コロナの影響とは?

KAGRAが本格稼働を始めたのが2020年2月から。4月には海外の他の重力波望遠鏡との共同観測も予定されていたそうですが、新型コロナウィルスパンデミックの影響によりお流れになったそう。Virgoはイタリア、LIGOはアメリカ、いずれもロックダウンにより実現できなかったとのこと。

KAGRAにおいても、コントロールルームが密にならないように入室は3人が上限になり、当初想定の3分の1以下に。リモートでの業務が増えた結果として効率がかなり下がったそうです。

とはいえ、300万光年から4億5千万光年への観測範囲拡大に向けてノイズハントを続けながら、最高性能を引き出すべく進化を続けているそうです。

今回、現場の話をしてくれた麻生さん、本当にこの仕事を愛しているんだなって思いました。愛が溢れていましたもんね!



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