こんにちは。
NHK Eテレで放送している『サイエンスZERO』。毎回毎回いま話題の最先端の科学と技術をとっても分かりやすく解説してくれるので、ワタクシの大好きな番組でもあります。今回は、2020年3月22日放送の「夢の接着剤に!高級食材に!“地味すぎる生き物”驚異の実力」ご紹介します!
いま「フジツボ」を愛する人が続出!?船底やスクリューに付着し船舶関係者にとっては大迷惑のフジツボだが、水の中でもピッタリくっつく驚異的な接着力の謎が解明され、夢の接着材に道がひらけてきた。また、青森県ではフジツボをおいしく食べる調理法が開発され、大人気に。新たな養殖法の研究も進んでいる。なぜフジツボが注目されるのか、科学の視点で迫ると、すべてはフジツボの驚くべき生態に関係していた!
サイエンスZERO〜放送日と出演者
【放送日】2020年3月22日(アンコール:初出2019年10月20日)
【司 会】小島瑠璃子、森田洋平
【ゲスト】海洋生物研究家…冨士うらら,八戸学院大学特任教授…鶴見浩一郎,製品評価技術基盤機構研究専門官…紙野圭,岩手生物工学研究センター主任研究員…山田秀俊
【語 り】川野剛稔
【放 送】 毎週日曜 [Eテレ] 午後11時30分~0時
【再放送】 翌週土曜 [Eテレ] 午前11時~11時30分
そもそもの『フジツボ』の中身、正体は?実は甲殻類〜
海辺の岩場やテトラポットにへばりついて群生しているフジツボを見たことありますよね。触って見ると貝殻のように硬いのでてっきり貝の仲間かと思っていましたけど、実はエビやカニの仲間だったんです。甲殻類なんですよ〜 ビックリしました。漢字で書くと『藤壺』、『富士壺』は当て字のようです。船底やスクリューに大量にへばりつくフジツボ、船舶にとっては大変な厄介者のようですが、その生態や利用分野を知るとヒジョ〜に面白いんです!
フジツボ愛あふれるうららさんが解説!フジツボ学の先駆者はなんとあのダーウィンだった!?
説明してくれたのはゲストの冨士うららさん。フジツボ愛が溢れ出てる女性海洋生物研究家です。フジツボの美しさに魅了されて、「フジツボ 魅惑の足まねき」というフジツボに関する著書まで出版されています。うららさんのフジツボコレクションを見ると、確かに色や形がさまざまで綺麗です。このうち南米チリに生息する世界最大のピコロコが紹介されました。最大30cmにもなるようです。こじるりさん曰く見た目は「エイリアン」。確かにそっくりです。
ここまで大きくはないけれども、日本最大サイズのフジツボはミネフジツボ。とっても美味しいようです。
さらにうららさん、出版されてから160年以上経ったいまでもフジツボ研究者に参照され続けている本を紹介してくれました。チャールズ・ダーウィン著、あの進化論のダーウィンです。ダーウィンは進化論前に8年間、フジツボだけの研究をしていたそうで、実はフジツボ学の祖なんだって!
フジツボの生態(赤ちゃん誕生〜移動〜捕食〜生殖)ってどうなってる?
フジツボの赤ちゃん(ノープリウス幼生がふわふわ移動)
卵から孵ったフジツボの赤ちゃん、岩場で見るような硬い殻はまだ持っていません。ノープリウス幼生として海の中を泳ぎ回る浮遊生活を送ります。ノープリウス幼生段階では植物プランクトンを食べ、体内に栄養分を蓄えていきます。
フジツボ直前!触覚でペタペタ歩行のキプリス幼生
次の段階がキプリス幼生。くりくりした目と2本の触覚がカワイイ。この段階では餌を捕食せず、ノープリウス幼生段階で蓄えた栄養分を使って生活しているそうな。そして、固着して生活する場所を決め、プリッと脱皮してフジツボの形になるんです。
フジツボの捕食!蔓脚で植物プランクトン捕食〜
フジツボになったら、当然自分では移動することができないので、曼脚(まんきゃく)という触手を使って、周囲の植物プランクトンを捕食して生活します。
フジツボの驚きのパートナー探し!
フジツボは雌雄同体なんですけど、自分自身で受精を完結させる自家受精はしないそうです。自分自身は動けないんだけどパートナーを探すんですね。一体どうやるんでしょう???
ひとつは、岩などに固着する際に仲間がいる同じ場所を狙うそうです。だからびっしりと群生しているんですね〜
そして驚きの生殖行動〜 フジツボの交尾の様子は下の動画をご覧くださいね。にゅ〜っと伸びてます!
フジツボ研究から夢の接着剤を実現!水の中でもガッチリ接着!
水に濡れた表面を接着させるのは非常に難しく、ゲストの紙野さんは夢の水中接着剤の実現を目指します。これが実現すると歯や骨をあっという間に直すことができるかもしれません!
フジツボは汚損生物と呼ばれ、憎むべき敵とみなされているとか。船底にくっつき船の燃料消費を悪化させたり、養殖ホタテにひっついて駆除に大変な労力がかかるといいます。そんなフジツボですが、見方を変えると水中でガッチリ強力にくっつく物質を体内で合成しているということ。 フジツボ1個あたり100kgの荷重をかけてもでもビクともしないとか。
そんなフジツボの特性を20年に渡って研究を続けた結果、フジツボが体内で合成する接着成分が5種類のタンパク質で構成されていることを突き止めました!そのうちの3種類のタンパク質については微生物を使うことで合成することができるようになってきたそうで、残る2種類についてもフジツボが体内合成するタンパク質と全く同じでなくても実現できる可能性があるんだとか。
現在すでに水中でも使えるエポキシ系の接着剤は市販されていますが、フジツボ由来の接着剤だと、自然環境下で分解されることからサンゴの養殖や歯の治療などに環境負荷のない利用が可能になりそうなんです。実用化が待ち遠しいですね!
フジツボは体にいい高級食材だ!
番組ゲストの鶴見さん、フジツボの養殖法を研究しています。フジツボの栄養素の面では山田さんがサポート。フジツボの可食部から油を抽出することを研究しています。フジツボの油にはDHA、EPAが含まれていることが分かって、美味しいだけじゃなく体にもいいことも分かってきたようです。
フジツボ(ミネフジツボ)の養殖
ホタテ養殖では厄介者のフジツボですが、青森県陸奥湾ではホタテの貝殻を使った養殖がすでに行われているようです。そんななか、鶴見さんは養殖にプラスチック板を使って、板の上の狙った場所にミネフジツボをひとつずつ定着させるために、フジツボのユニークな生態を利用しているんです。同じ種類のフジツボが狭い範囲に集まってくるっていう習性です。フジツボから抽出した成分をプラスチック板に塗り込み、近くに仲間がいると思い込ませて誘導しようというアイデアのようです。プラスチック板を使うメリットはもうひとつあって、収穫の時の手間が大幅に減らせる点。板をひねったらポロポロ外れるんです。フジツボの生育が良いの場所はホタテ養殖と同じような浅い場所。ホタテ養殖に迷惑をかけないような外海(そとうみ)での養殖を検討しているといいます。
フジツボの食べ方・どこで食べられる?
フジツボ料理の第一人者として紹介されたのが浪内(なみうち)さん。漫画の美味しんぼにも実名で登場されたことのある青森の料理人です。ゴミとして捨てられていたフジツボを酒塩煮に。料亭の人気ナンバーワンの料理になったそうです。青森県を中心にフジツボ料理を広めていき、ゴミだったフジツボが今では1キロ4,000円の高級食材になっているそうな。味はカニ。日本酒が合いそうです。浪内さんの普及活動もあって、今では青森だけでなく関東でも食べることができるようです。
フジツボ余談
フジツボが膝に?フジツボにまつわる都市伝説
かなり以前から耳にするお話で、ググった時の検索候補にもいまだに上位表示されるお話の件。一度くらいは聞いたことありませんか?こんな話です。
『海でフジツボが張り付いている岩場で転んで膝にケガをしちゃいました。だけど大した傷じゃなかったので簡単な手当てで済ませたけれども、何日が経った後に膝に違和感が出てきた。で、医者にかかったら膝でフジツボが増殖していてビックリ!』ってたぐいのお話。
フジツボの知識がなかった当時はそんなこともあるんだ〜 へぇ〜 海では気をつけよう〜 って思ったもんですが、サイエンスゼロで紹介されていたようなフジツボの生態を知った今では、「そんなわけないよね」と分かりますよね。
フジツボとフジツボマフラーのご関係は?
クルマ好きの方は“フジツボ”と言ったらクルマ用の排気マフラーの方がしっくりきますよね?フジツボマフラーを作っているのは藤壺技研工業株式会社さん。会社名の由来は、社長さんのお名前を見ると一目瞭然。藤壺さんというお名前なので人名由来ですね。こちらの会社さんは昭和6年(1931年)創業で戦前から続く歴史ある会社さんです。フジツボとは漢字名だけが一緒でした〜
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